愁訴の原因と誤作動

 

 愁訴というのはその原因がどこにあるかを考えるとキリがないものです。例えば「右膝の痛み」となれば、そこに構造的な問題として「捻れの力」が生じている可能性が高いのですが、この捻れが足首などの下部から生じているのか、上体より生じているのかで施術対象は大きく変わってきます。また捻れには「本来の力が発揮できないことを補う」という意味もあるので、その力の欠如の背景には下肢の循環不良など、さまざまな要素があります。別の見方をすれば内臓側(肝臓など)に機能低下があり、その結果として膝が捻れることもありますし、右半身側に自律神経の異常が現れ、その結果として膝が強く捻れることもあります。愁訴の背景に存在する原因というのは、その可能性を追えばキリがありません(また実際にはいろんな要素の複合で愁訴が生じる)。

 

 こうした「原因の複雑さ」を整理するために、大和整體では一時的な要因を「構造的な問題(運動器の問題)」とし、二次的な要因を「内臓機能の問題」、三次的な問題を「神経機能の問題」としています。簡単にはまず構造的な問題を正し、それで改善しない場合は内臓を疑い、それでも改善しない場合は神経機能を疑うということです(解消しやすい可能性から順に消していく)。もちろんこうした中でも先に説明した「回復力の不足」や「身体機能の複雑化」についても忘れないでおきます(直接治すことに拘らない)。その上で体の諸機能を改善する基本的な方法論は「身体組織を正しく認識させる」ことにあります。大抵の体の不調というのはいわば「体の誤作動(誤作動の習慣化など)」であり、そこを正すことで機能の改善が見込めるわけです。その誤作動の前提になっているのは「自身の身体各部を正しく認識できない」ことにあり、その結果として多くの機能的な誤りが生じることになります。この「誤った認識」を正すことには大きな意義があります。一般的な施術が重視する「筋肉の緊張の緩和」も、それによって一帯の機能が体や脳にとって正しく認識されることに繋がることが、その効果の主な理由なのだといえます。

 

 多くの施術において筋肉への調整が主体であり、かつ有効である理由は、それが体に生じた誤作動に強く反応するのが筋肉であり、その筋肉の異常にその誤作動が反映されているためです。誤作動を補うために行われる筋肉の緊張(保護)は、それ自体が長期化して安定してしまうと、その誤作動そのものを安定させてしまうという悪影響に繋がるので、これを解消することで誤作動そのものも改善されやすくなります(筋肉という周囲環境の変化が誤作動している部位への機能的変化に繋がる)。ただ、筋肉の緊張を弛めても(かつ筋肉の張力を均一化させても)治らないという場合は、その誤作動を起こしている組織を直接に改善する必要があります。基本となる施術は、その誤作動の周囲に起きている筋肉の張力異常を改善することを主体とするのですが、そこから先の施術にはそれぞれの組織の機能を直接、かつ個別に改善する必要が生じます。