施術と共感

 

 手技というのは形を真似ることで同じような効果を得ることができるものと、そうでないものがあります。大和整體ではこれを手技について「共感しない施術」と「共感して行う施術」に分けて考えます。この「共感」は「同調」と同じ意味で考えて貰って構いません。手技が施術者のみの感覚で行われるとすれば、それが「共感しない施術」であり、相手の体の情報を受け取りながら行われるのであれば「共感して行う施術」となります。通常、初心者が学ぶものは大抵が「共感しない施術」であり、施術者は教えられた通りに手技を行えば一定の効果が得られます。これに対して「共感して行う施術」というのは、触れた時点から「相手の体の反応」を感じ取り、それに手技に反映させる方法(相手の反応に応じて手技を変化させていく)と、完全な受け身で相手の反応の促進のみに徹する方法があります。

 

 これらは比率の問題であり、相手の体の反応を必要としない施術は「施術者と受け手の比率が「10対0」ということで、完全な受け身の施術は「0対10」ということです。この場合、相手の反応を手技に反映させるのはこの中間になるわけです。ただこうした書き方をすると、「共感して行う施術」の方が高度な施術のように思われるかもしれませんが、施術における共感には「相手の体の悪影響を受ける」というマイナス面もあります。そのため、大和整體ではあえて最初は「共感しない施術(術式一)」を優先させます。これには「施術の型」を覚えて貰うことと、施術を通じて自身の体を整えるという意味があるので、これを覚えることで「共感して行う施術」に耐えられる体を作る意味もあります。ちなみにこの「共感」というのは勉強の中でよく「体との神経の接続率」と呼んでいるものです。

 

 施術に慣れてくると、相手の体に触れた時点で「互いの体が繋がる」という感覚が増してくるものです。これは施術に熟達するほどにその繋がりが深くなっていくものですが、これを「体との神経の接続」とすればそこに「接続の程度」があるわけで、どの程度まで感覚を接続して施術を行うかで上記の「比率」が成立することになります。ただしこれは接続の比率を強めれば強めるほど施術者の側の「主導権」は乏しくなり、悪影響を受け易くなります。重要なのはその時の手技ではどの程度まで接続することが有効であるかを見極め、必要最低限の接続で手技を行っていくことです(必要以上に主導権を相手に与えないようにする)。その中では当然「一切接続をしない」という選択肢も必要になってきます。基本的には「施術の反応が悪い体」にはなるべく深く接続をせずにおき、施術を重ねることで反応がよくなっていくのに合わせて接続の度合いを高めていくのが安全な方法です。初めての患者さんでも反応がよいからといって接続を高めてしまうと、後から何が出てくるか分からないため非常に危険です。