その他・感覚の回復

 

     イ)治癒に必要な体力がない(治るための機能的な余裕がない)
     ホ)体が正常に機能できない何らかの要因がある(既往歴など)
     ヘ)体の機能が複雑化することで脳が正しく管理しにくい状態にある
     ニ)意識や精神の問題が体に誤作動を起こさせている【意識・精神的要因】

 

 ここまで上記の四項目をそれぞれ「イ)回復力の不足」「ホ)局部的な機能異常」「ヘ)身体機能の複雑化」「ニ)精神的な要因」と置き換えて説明してきましたが、もちろんこれに入らない「治らない理由」も多くあると思います。ただ、その中でも「基本の段階」では扱うべきではない対象というものもあるので、ここで少し触れておきます。中でも特に厄介なのは「自身の体を正しく認識できていない状態」で、これは脳が自身の体についての正しい位置を認識できなくなっている状態(失認)です。体は体性感覚による正しい位置情報が脳に認識されることで、その情報を基に正しく動かすことができます。しかしその情報に大きな誤りがある、もしくは情報自体が入ってこない場合では、決して正しい動きを行うことは出来ません。そして、こうした体に対しては通常の「身体機能を改善するための施術」が意味をなしません。

 

 ただ、これは特別なことではなく、多少なりとも誰もが持っているものです(程度の差)。そのために大和整體ではよく「感覚を回復させる施術」を頻繁に用います。感覚の回復というのは機能の回復と根本的にその意味が異なります。それはある部位が正しく動かない理由が、脳の側の認識にあるためです。例えば昔に足首にひどい骨折をした人がいるとします。足首というのは多くの骨が協力して動くことで複雑な動きが可能な部位なのですが、これは同時に脳にとってそれを正しく動かすのに「大きな負荷」のかかる部位でもあるということです。こうした部位が一時的に大きく損傷してしまうと、脳はその部位を正しく動かすことができなくなり、そこで「固める」という選択を多く用います。これはある一帯を固めることによって、その複雑な機能を単純化(大部分の機能を捨てる)して、全身の機能との統合を図るとする緊急的な措置です。一度この状態に入ってしまい、それが長期化した体組織というのは、脳の側から「そこを動かす」という必然性そのものが消え去ってしまっているので、運動機能を回復させてもそれを使おうとしないのです。ひどい人では全身そのものの感覚を失認しているケースもあり、こうした場合では体そのものが「ない」のと同じですから、いくら施術を行っても有効な反応が得られるわけもありません。

 

 前述の例は分かり易いように「骨折」などの重大な障害としましたが、実際には日常レベルの体の使い方如何で誰にでも同様のことは起きているものです。こうした「脳の誤認識(失認)」ともいえることから起こる体の不調というのは、通常の施術と同列に扱うことはできません。ただ、こうした体に対して、感覚の回復として行う施術の全てが通常の施術とは異なる特殊な内容という訳ではありません。多くの方法は通常の施術と同じで、違うのはその機能回復を脳がどの程度認識し、反応しているかを見定めながら行う点です(脳の反応に合わせて施術を進めていく)。これは大和に独特の施術だと思いますが、そもそも大和の施術は「感覚の回復よって身体機能を正常化させる」ことを目的としています。基本の段階で扱うには難しい内容ですが、これなくして大和整體の施術はあり得ないので、念頭には置いておいて下さい。