局所的な機能異常

 

 局部的な機能異常は既往歴を例にすると分かりやすいと思います。腰痛を抱えている人がいて、その潜在的な要因が昔の足首の骨折である、などということは多々あります。体というのは本当に悪くなっているところでは血液の循環不良とともに神経反応も低下しているわけで、痛みをあまり感じないものです。そして痛みなどの愁訴というのは、大抵がそうした問題を庇うことで無理をしている部位に起こるものです(これが患部を施術の対象としない理由)。本格的に悪くなってしまえば血液の循環不良と神経反応の低下で痛みも感じなくなるわけですが(多くの人がこれを「痛みの消失→治癒」と勘違いしがちです)、中途半端に血液も巡り、神経も反応しているために痛いわけです。痛みを敏感に感じることのできる程度の機能障害には用はないわけで、問題はその部位への「過剰な負担」の原因がどこにあるかです。

 

 これが「骨折などの既往歴」な場合は比較的見つけやすいので助かりのですが、厄介なのが小さい頃のケガや手術などです。小さい頃のことなので本人も忘れていることが多い上に、覚えていてもそれが関係しているとは考えませんから、話してもくれません。その上、長年かけてうまく庇う動きを覚えているので、表面的には正常に見えてしまうことが多いのです。実際の施術では「壊れている部位」は見つかっても「原因が分からない」ということの方が多いものです。目の前の愁訴について、こうした潜在的な「局所的な機能異常」があるかどうかは、施術に対する不自然な反応の有無で見極めます。「○○をしたら○○となる筈」という正しい反応が起こりにくいのです。実際には、人間長年生きていれば絶対にそうした問題の二〜三はあるわけで、始めから疑ってかかる位の方が自然ではないかと思います。最も確実性が高いのは、次に説明する「体を整える施術」を行っていくと、そうした部位だけは他の部位のように自然に整うことはできないので、そうした潜在的な問題が表面化するようになります(体を整えることで潜在的な問題を浮き立たせる)。

 

 そうした潜在的な問題が見つかったとして、その改善は少々厄介です。そもそもが長年かけて動かない状態で安定している組織なので、機能改善が難しい上に、仮に機能を改善しても神経が正しく反応しないのが普通だからです。よってここでは機能回復の他に「神経反応の回復」という施術が必要となります。これは末梢神経の機能神経よりも、脳がその部位を正しく認識し、機能させることができるか否かが重要となります(脳はその部位を正常に機能しない(させない)ことを前提に全身の機能を構築していたため)。また機能を回復させた局部は、それが全身の諸機能と馴染み、統合される必要もあります。これを改善が容易な順から並べていくと「構造的な機能の回復」→「運動神経の機能回復」→「感覚神経の機能回復」→「脳による正しい運動機能の再学習」→「全身との機能の統合」となり、この全てを以て初めて「機能が回復した」と言えることになります。