なぜ治らないのか 2

 

     イ)治癒に必要な体力がない(治るための機能的な余裕がない)
     ホ)体が正常に機能できない何らかの要因がある(既往歴など)
     ヘ)体の機能が複雑化することで脳が正しく管理しにくい状態にある
     ニ)意識や精神の問題が体に誤作動を起こさせている【意識・精神的要因】

 

 上記は先の区分から不要なものを排除し、整理したものです。ここでは「治らない患者さん」について、その理由が上記のどれかに該当しているものとし、それがどれであるかを限定することで施術が始まることになります。それぞれを単純な言葉に置き換えれば「イ)回復力の不足」「ホ)局部的な機能異常」「ヘ)身体機能の複雑化」「ニ)精神的な要因」となります。

 

 それぞれに必要な施術について具体的に説明しておくと、「イ)回復力の不足」は全身の機能の底上げや、体に緊張を強いている交感神経の抑制(副交感神経の活性化)が主体となります。「ホ)局部的な機能異常」は一般的な「局部の問題を改善する施術」に最も近いのですが、全身の機能を損なうほどの局部的な機能異常を指すので、ある程度の「徹底した施術による機能の改善」が必要となります(中途半端な改善では意味がない/対象は必ずしも患部ではない)。「ヘ)身体機能の複雑化」は「これぞ整体」といった対象ですが、複雑化した誤作動の多くなっている身体諸機能を段階的に整えていくことで、本来の単純な機能へと戻していきます。「ニ)精神的な要因」については手技療法の範疇ではないという考え方もできますが、その背景に身体機能の問題が控えていることは珍しくないので、これを体の問題に置き換えて考えていくこととします。ここではイ)ホ)ヘ)のいずれかがニ)に効果的に作用することとする)。

 

 こうした区分を用いる主な理由は「患部を触らない施術」を徹底して貰うことにあります。上記のうちで患部を触る可能性があるのはホ)のみですが、これも基本的には既往歴などの潜在的な要因をより重視するため、表面化している愁訴=患部などはあまり対象とはしません。「患部を触らないで施術を行う」となると、多くの人は何を行ったらよいのか迷ってしまうようなので、そのための指標としてこれらの区分を設けているわけです(患部に囚われずに視野を広げる)。理由にどれを選ぶかによって施術はその対象部位も狙うべき効果も全く違ったものになるのですが、これはそれぞれで全く違う施術=手技を用いるということではありません。手持ちの手技も、その目的が変わるだけで結果として得られる効果が大きく変わるのだと考えて下さい。