7.統合の必要条件


 施術による統合は補助・誘導のいずれであれ「全身の諸機能が均一に近いこと」の他にも幾つかの条件があります。まず統合という大きな変化を起こるためには相当な体力が必要となります。この体力は本来、全身の諸機能が均一に近いこと、つまり体が一定期間、安定状態にあることで生じる余力によって得られるものです。この体力の充分な蓄積がなければ深いレベルの統合は起こりえません。体は治すことばかりに拘ると、施術での反応ばかりを優先させた結果として体力を大きく消耗します。よってある程度体が整ってきたら「さらに上」を望むのではなく、現状の安定を優先させ、体力を蓄えさせる必要があります。

 

 また統合は体力の他に、脳の機能にも相当な負荷がかかります。脳の機能が安定し、統合反応に伴う情報処理ができる機能的余裕を確保する必要があります。統合反応というのは、主には交感神経の働きが著しく抑制されることで、相対的に副交感神経の働きが強まり、その結果として脳の機能が「外部に対する行動・思考」ではなく「体の内部の管理」に集中することから成立します。よって脳の認識対象を外部から体の内部へと移させ、それに専念させることで統合に必要な諸反応が促進するわけです。よって外部に向いている脳の働き、その大部分をいかに体の内部に向けさせるかが重要なのですが、普段は外部に向いてばかりいる脳にとって「内部の情報処理」は負担が大きいので、普段の施術から段階的に慣れさせていく必要があります。慣れていればいるほど、脳の機能的余裕が生まれやすくなるわけです。

 

 これが「誘導」の場合では、統合の対象自体が限定されているので、補助の場合ほど諸条件は厳密ではなくなります。ただ、誘導も体の状態に合わせてその延長で行う場合(補助だけでは足りない部分を誘導で補う)と、はじめから施術者の意図した方向に統合させる誘導の二種類があります。後者の場合が「強制」と違うのは、理由が「体から特定の機能の統合の感覚が欠如している場合(自身での統合が難しい)」ということで、体の機能、その方向性そのものを大きく変えようとするものではないことです(感覚の不足を補うために行う統合)。どちらにせよ、補助ほど諸条件が厳密ではないものの、施術者が引き起こそうとしている統合に必要な条件を体が満たしているかを見極めることは重要です(現状の体で統合できる範囲を見極める)。

 

 「強制」については、主に「現状で危険を伴う状態にある体」に対して、その状態を一時的に回避するための表面上の統合です。これは補助・誘導に慣れた場合に扱うべきものなので、ここで詳しくは扱いません。