6.理想の統合と経験

 

 施術による理想的な統合とは、施術者が普通に施術をしている最中に、施術者の意図とは関係なく独立した身体反応を起こしはじめ、勝手に全身の諸機能を統合していくというものです。体は全身の諸機能がほぼ均一な状態にあれば、その時点で「いつでも統合できる状態」にあると言えます。あとは「きっかけ」だけで、この場合は通常の施術がそのきっかけとなるわけです。このように自発的な統合反応が始まると、施術者はただ体を触れて、その反応を後追いするしか出来ません(瞬間瞬間で反応が変わり続けるため施術では追いつけない)。統合を終えた体は全身がただ液体の詰まった袋のようになり、全身のすべてが均一な流れとなります(水袋)。

 

 個人的には、施術による統合にはこの感覚を一度でも経験していることが必須だと思います。こうした反応が体の機能に含まれていると実感することで、統合のイメージが明確になるためです(ただこうした統合の機会に出会うことは稀です)。こうしてイメージが定まれば、同じ状況を再現しようとすることで「擬似的な統合」へと繋がっていきます。

 

 こうした統合の状態にある体というのは、その最中も終わった直後も体をほとんど動かすことが出来なくなります。体のシステムが急速に、かつ根本から変化しているので、それが終わって新しい体のシステムに慣れるまでは体を動かせなくなるのです。これは風邪に伴う高熱による統合でも同じことです。そして意図的な施術によって可能な統合の理想はこの状態を再現することで、この場合は擬似的な統合でも上位の変化と言えます(ただしそこにマイナスな感覚がないこと)。これは体が動かないことが重要なのではなく、一時的に体を動かせなくなるほど、深いレベルから機能が再構築されている状態が重要であると考えて下さい。

 

 実際に施術を通じて得られる統合がこの状態に達することは稀なので、大抵は「誘導」に属する局部機能の統合に留まります。最も達成しやすいのは血液循環が全身で均一になる「血液循環による統合」ですが、他にも骨感覚、神経反応など、「何か特定の感覚」について、その機能の統合を図ることができます。こうした「断片的な統合」は、それ自体、体の機能の劇的な変化には繋がらないものの、体の機能を断片的に安定させる効果となりますし、体をいろんな面から統合させていくことで、本来の自然な統合が起こりやすくなります。