身体機能の統合

 

 私たちにとって「体の治癒反応」は非常に重要ですが、これに欠かせないのが「身体機能の統合」です。仮に愁訴をケガなどと同列に考えるなら、局部的に起こった障害(機能的問題)が解決すればそれは一応「治癒」と言えます。しかし愁訴(や疾病)がケガと違うのは、そこに「再発」が生じやすいことです。体は全身の全ての組織がバランスを取り合いながら機能しているわけで、そこで何らかの愁訴が生じたとすれば、それは全身の機能バランスが崩れた結果、ある局所に機能的負荷が集中した結果です。局所の痛みが消失しても、全身の機能バランスが変わらなければ、一定の条件の下で再発するのも当然です。

 

 どんな愁訴でも、それが外傷などの突発的なものでなく、日常生活の中で自然に生じたものであれば、その愁訴(や疾病)の治癒は全身の機能バランスの回復なしに「正しい治癒」とはなり得ません。そしてこの「全身の機能バランスの回復」には、全身の諸機能の正しい「統合」が必須となります。

 

 この「統合」の分かりやすい例としては「風邪(発熱)」があります。これは悪性のウイルスに起因する「病的な風邪」ではなく、体が著しく疲労し、通常の機能では回復が難しい場合に起こる「自然発生的な風邪」です。子供はよく熱を出しますが、熱を出すことによって全身を効率よく殺菌するので、熱が下がった後は前より元気になっているものです。これは大人でも同じことで、定期的に風邪をひいて高熱を出せる人は比較的健康な体を持っています。対して、日頃から愁訴や疾病に悩まされている人ほど、高熱を出すことが出来ない体になっており、自身の体をうまく統合できずにいるものです。私自身は、高熱を出せない患者さんが高熱を出せるようになることを、施術の重要な目標に据えています。

 

 体というのはその構造的な中心(ここでは物質的な脊椎でも感覚的な中心軸でも何でも構いません)が安定し、その安定した中心に向かって運動器や内臓などの全ての組織がまとまり、一つの「強い構造体」であることが理想です。対して愁訴や疾病を抱えている人というのは、誤った中心で全身が機能しているか、まとまりがないために機能が正常に活性化できず、弱い構造体となっているものです。私たちの行う施術はこの誤りを正すために行うものなので、どんな施術もそれが最終的には「身体機能の統合」に繋がるものでなくてはなりません。