術式八の概要

 

 大和整體では「全身が均等に動く」ということを重視しますが、体にはさまざまな機能があり、ある一つの機能では均等であっても、他の機能はバラバラなどということが当然のように起こります。これまでの術式も、どれも「何か特定の機能に対して全身が統合する」という内容でした。実際に「体の全ての機能を統合する」ということは、人の手では適わないことだと思いますが、それでも可能な範囲で「最も多くの機能が統合している状態とは何か?」と考えた場合、それを大和整體では「循環」としておきます(八つの術式を使えるようになることが基礎の習得なので、あくまで基礎の範囲での話です)。そしてその循環は、副交感神経の活性化に伴う、毛細血管優位の循環を指します。これまでの段階で血液の流れを感じることは充分に出来ていることと思いますし、飽和の感覚も掴めていると思います。単純に言えば、この「飽和」を全身に引き起こすことができれば、それが血液の循環における統合となります。それをどこから行うかは、いろんなパターンがあるのでここではあえて特定しません。

 

 これまでの内容で、筋肉なり内臓なりに飽和を行ってきましたし、それを広範囲に広げることも行ってきました。その上でそれを全身に広げるということは、簡単ではありませんが、不可能なことではないと思います。しかしそこで問題となるのは副交感神経の活動レベルです。これは術者自身の副交感神経の活性化の程度がそのまま相手の体にとっての反応が可能な限界になるということです。副交感神経の活性化は、それが進めば進むほど体の細部の機能までが活性化し、充実します。本来、全身の血液循環が毛細血管レベルで全身均等になれば、たいがいの愁訴は治ってしまいそうなものですが、全身が飽和するという広がりを平面的な広がりとすれば、そこには深さという副交感神経の活性化の程度(細部の機能の活性化の程度)という要素が加わるようなものです。愁訴の解消に必要な「深さ」が足りなければ、いくら全身が飽和したとしても治癒には至りません。

 

 加えて、普通は全身で血液の循環が均一になれば、全身の神経の活動も比較的均一になるものですが、実際に体が著しく不調な人では、全身の血液循環が均一に感じられているにも関わらず、著しく機能が停滞してしまったような患部では、神経が正しく反応していないということが起こります。これは循環を主対象とする術式の八の欠点なのですが、一定以上に神経反応の弱い部位については、その神経の働きに相応の循環が起こっていれば、それが他の正常な部位と同じに感じられてしまうのです。こうした神経反応が著しく停滞している部位には「直接の回復」が必要であり、そのための施術は「循環の誘導」となります。先に術式の七で「引き込む」という表現を用いましたが、機能が停滞している部位とその周囲では、触れた時に顕著な「境界線」があります。この境界線を手で触れて消すことで、患部へと僅かずつ血液を引き込み、神経を段階的に回復させるという作業を行います。この上で再度、全身に循環の飽和を行うのです。