術式七の概要

 

 術式七は「全身の統合」という意味と同時に、術式区分の体壁系の最終段階という意味も持っています。これは運動器の最小の動きを「呼吸運動」と捉え、呼吸の動きに全身の骨格が連繋した状態を作ります。私たちの体を構成する全ての骨組織は、呼吸の動きに連動することで本来の活性化を図るものです。骨組織が動くということは筋肉も動くわけで、これは結果として呼吸の動きが全身の骨組織に正しく伝わっていれば、それだけで全身の諸組織は活性化することになります(呼吸をしている時の僅かな胸郭・腹部の動きが全身の全ての骨組織・筋肉へと伝わる)。これを「統合の一」とした理由は、先の術式の六で「内臓の呼吸の動き」を扱ったためで、運動器と内臓の双方が呼吸の動きに連動することで、結果的に全身が統合することになります。

 呼吸の動きが全身の骨に伝わるといっても、たいていの人ではその殆どが緊張によって打ち消されているため、この施術は事前に全身の緊張がある程度まで弛められていることを前提としておきます。その上で、対象となる骨組織を触れ、そこで「抑制されている呼吸の動き」を探すか、または呼吸の動きに合わせて誘導します。そもそも体のどの骨組織にも「動き」はあります。それを感じられないのは多くのベクトルが干渉し合い、力を打ち消しているためです。このベクトルの干渉を感じ取り、その中から呼吸に伴う動きを見つけるということです。これが難しい場合は、意図的に呼吸と同調する動きを骨組織に行わせ、内部で弱まっている「呼吸による動き」を引き出していきます(呼吸の動き骨へと引き込む)。これによって骨組織の自発的な動きを引き出せれば、あとはその範囲を隣接する骨組織へと順次広げていきます。呼吸に伴う体(骨組織)の動きとは「吸気の伸展相」と「呼気の屈曲相」の交代です。そこで起こる全身の骨の動きは誰にでもある程度は想定しやすいものだと思います。例えば大腿骨なら「吸気=伸展相」では外旋に動き、「呼気=呼気相」では外旋が元に戻る内旋です(ここでは細かな動きは除外します)。

 ただしこの呼吸運動には二つの意味があり、一つは一般的な肺呼吸ですが、もう一つは脳脊髄液の循環リズムによる脳呼吸となります。最初の動き出しは呼吸運動に伴う胸郭・腹部の動きに合わせることで、骨組織の動きを誘発させやすいのですが、その動きが一定以上に大きくなると肺呼吸よりも脳呼吸のリズムが強く現れるようになり、逆に脳呼吸よりリズムが不安定な肺呼吸にはだんだん合わせにくくなります。ここで骨組織の動きを脳呼吸のリズムへと切り替えます(脳呼吸のリズムが分からない場合は肺呼吸のリズムで進めて構いません)。これによって全身の骨組織が脳呼吸という一つのリズムに対して統合している状態を作るのが術式の七です。これは体壁系主体の施術のようですが、最初に肺呼吸の動き(内臓の働き)から骨組織の動きを誘発することで、結果的に内臓系と体壁系の両者が統合することになるため「統合の一」としているのです。