術式六の概要

 

 術式六は内臓の生理的な活性化です。これは循環の促進による内臓の活性化で幾つかの方法を用います。一番単純な方法は対象臓器に圧力を加えて臓器内部の圧力を均一にする方法です(ただし対象は実質臓器が主体となります)。これは術式の一の「筋肉の張力を均一にする」の応用で、明確な形状を持つ特定の組織に対して、その内部のみに力を加え、内部の圧力を高めることで全体が均一な状態を作り出します。内部の圧力が均一になるということは、血管にかかる圧力が均一になり、その結果として血液の循環が安定・促進します(体液でも同じ)。そして内部で血液が充実すると、その限界点を超えた瞬間に周囲へと力が拡散することになります(この状態を私たちは「飽和」と呼びます)。この飽和が起こることによって、対象臓器は活性化した状態で安定します。ただし体壁系を触れる感覚で行ってしまうと、繊細な内臓はうまく反応しないので、内臓の働きを止めない柔らかい手指を作ることが前提となります。

 

 他に一般的な方法としては「内臓の動き」の促進があります。内臓にうまく触れることができると、内臓自体の「動き」を感じることができます。これが一番分かりやすいのは「呼吸の波」による動きで、呼吸運動に伴い、僅かに動きが生じているのを感じ取れます。この動きに同調しつつ、これを促進するように内臓に柔らかな刺激を加えることで動きは活性化し、その活動が一定以上に到るとやはり「飽和」のように周囲へとその動きが伝搬していくことになります。この場合の対象臓器は実質臓器でも中空臓器でも構いません。これは慣れれば「動きを掴まえる」というだけでその動きを活性化させることができます。内臓への施術は、その方法論よりも「内臓の生理機能にアクセスできる手」を作ることの方が重要です。その手さえできてしまえば、これまでの術式の応用としていろんな方法論を用いることができます。これはその人の体で副交感神経の働きが強まっており、全身の毛細血管へ血液が充分に循環している状態です。術者の体に、たとえ部分であっても強い緊張があると、それが内臓を触れた時に「刺激」として伝わり、内臓を緊張させてしまいます。しかし副交感神経の活性化による毛細血管の拡張が、そうした刺激を打ち消してくれるのです。

 

 いずれにせよ内臓への施術の目的は「内臓全体の活性化」です。局部の臓器だけを活性化させてもすぐ効果は薄れてしまうものですが、全体を活性化させる限りは効果も持続しやすいのです。そのためには「どの臓器から活性化させていくか」が重要となります。単純には肺や小腸の活性化は、呼吸機能の拡大、毛細血管への循環の促進という点で、内臓全体の活性化に繋がります。あと、大抵の内臓機能の低下には内臓全体の活性化を妨げている特定の臓器があるので、その活性化によって全体も活性化しやすくなります。内臓への施術はその時の状況に応じて柔軟に対応していくのが普通なので、あまり形を決めない方がいいのですが、重要なのはいかに無駄な体力を消耗させることなく、効率よく活性化させるかです。