局部を安定させる施術

 

 この施術の利点は緊張に対して無条件にそれを弛める効果を持つことです。それは支点に対して有効であると同時に、他の対象にも有効に作用します。これまでにも「対象を捕まえる」ということは説明してきましたが、この施術を特定の対象を捕まえた状態で行うと、その対象についてはやはり「無条件の弛緩」が起こることになります。これまでの施術と比べると、ずっと簡単に広い範囲を弛緩させることができます。そこで可能なのは「弛緩の先」まで行き着くということです。ある一帯の組織が弛緩していくとして、その終わりがどこにあるか気付くということは難しいものです。しかし体組織というのは、それがどんな変化であれ「終わり」まで行き着かない限りは安定した状態とはなり得ません。

 

 ある一帯の組織で「緊張が弛む」ということは、骨格筋などの筋繊維の弛みは当然として、それが血管レベルにまで至る必要があります(血管も筋肉で構成されている)。仮にその一帯で「血管が均一に弛む(開く)」ということが起これば、その一帯に限っては、筋肉の張力は均一になり、神経活動も均一になります。この状態に入ると、その一帯の組織を触れても「一切の活動を感じない状態」となり、これを「安定状態」とします(ただしそれは現状の体なりの安定状態)。体はこの安定状態に入ると、それを自ら崩すことを嫌うため簡単には戻らない状態となります。もちろん局部に安定状態ができれば、他の全ての組織とのバランスが崩れてしまうわけですが、この場合、体は安定状態を優先させて、他の全ての組織を変化させることを選びます(局部の安定状態を優先させたバランスの構築)。

 

 こうした安定状態を作る施術は、例えば「下腿部一帯」「大腿部一帯」といった運動器の一部(関節を含まない構造単位)に実践しやすいのですが、その他に内臓の各臓器のように「構造的に完結している組織」に対してはなお有効になります。