術式三の概要

 

 術式の三は内臓から体を整える施術です。術式の一と二では「体壁系(運動器)」の機能を整えることに焦点を絞ってきましたが、それだけでは体の機能が整わない場合はその原因を残る「内臓系」に求めるのが自然な考え方です。ただ、内臓という対象はその扱いが難しいため、大和整體では「内臓を扱う施術」について、「体壁系の感覚で行う施術」と「内臓系の感覚で行う施術」の二つに分けています。前者は内臓についての「物理的な動き」を対象としており、主に内臓の各臓器間に生じている「引っ掛かり」を消し去ることでその機能を活性化させる施術です。これに対して後者は内臓の「生理的な動き」を対象とし、自身の身体感覚そのものを内臓に合わせることで、その生理機能を直接回復させる施術です。一般的な施術者が扱うことができるのは前者の感覚に限られるので、これを術式三とし、後者の「内臓系の感覚で行う施術」はのちの「術式六」の扱いとします。

 

 術式三(術式六も同様)では体に生じている全ての問題は「内臓の問題に起因している」と置き換えることが前提となります。運動器機の問題でも脳の機能の問題でも、全て内臓起因とするのです。それが正しいかどうかは別として、そういう視点に立たなければ見えてこない問題というものが多くあります。 術式三の場合では、全ての運動器の不調を全て「内臓の物理的な動きの障害(引っ掛かり)」に置き換えて考えていきます。実際にあらゆる運動器の機能異常は必ず内臓の機能異常と関連しており、内臓への施術から運動機の問題を改善することができます。そのため、まずは運動器の異常がどの内臓の異常と関連しているかを見極めることが重要となります。

 

 手技療法の多くは、施術の主対象を「運動器」とし、内臓への施術を補助的なものとして軽視する傾向があります。しかし、人は内臓によって生きていますし、運動器の一番の役割は「内臓の保護」です。あらゆる運動器は、自身の関係する臓器に何かしらの異常が起これば、それを庇うために必ず緊張しなければなりません(内臓の保護)。動く場合には、この保護を最優先に行いつつ、可能な範囲でしか動くことができないのです(仮に運動器が内臓の状態を無視して自由に動いてしまえば内臓はすぐに壊れてしまう)。内臓が運動器に対して絶対的に優位な立場にある組織である以上、内臓の問題を無視して「運動器の機能を整える」ことは叶わないのです。このように重要な内臓への施術を術式の三番目としているのはその扱いが難しく、最低限の体の扱いを「運動器」に接することで覚えてもらうためです。「内臓が正しく機能すれば体(運動器を含む)は正しく機能する」というのが大和整體の根底にある施術観です。