体との隙間を消す

 

 術式二では術式一よりも手部に複雑な動きを強いると同時に、その力の強弱を使い分ける必要があります。術式一では「全身を均等に意識する」にだけ集中していれば良かったのが、今度はそれを維持しつつ手指の正確かつ繊細な動きを制御しなければいけないわけです。その際に問題となりやすいのが全身の動きや力と手部のそれをうまく同調させることで、この間に僅かでもズレが生じるとそれは受け手と施術者の間の「隙間」となり、力が自然に伝わらなくなります。簡単には肘に意識を集中して手指を動かすというだけで、その動きが手指単独の独立したものとなってしまい、そこに体が付いてこなくなるため、手先だけの施術となってしまうということです(手指の力が全身によるものではなくなる)。

 

 肘や手先の動きに意識を集中しなければならない術式二では、その動きに体をうまく合わせていかなければならないので、その調整は主に「臍部の移動」で行います。ただこれは、先にも「手先と臍の動きは同じ」と説明しています。まず施術に応じた手の形を作るというだけで、術式一の感覚の時には維持出来ていた手指と臍の関係は切れてしまうものです。よって手の形を作ると同時に、そこに生じる隙間をお腹の意識を近づけることで埋めます。これは腹部・腰部の中心(重心)を移動するという感覚でも同じことです(慣れたら意識の対象を丹田に切り替える)。手指の動きに合わせて腹部をそこに一体化させ、その感覚を維持したままで施術を行います。あとは手指の動きに臍の動きを合わせていくのは術式一と同じなのですが、手指の形を変える度にこの関係が途切れやすくなるので、慣れてきたら両者の関係性を変化させることなく手指の形を変化させることが出来るようにしていきます(遠指節関節と丹田の感覚を繋げたまま体を動かせるようにする)。

 

 また、手指と体部の間に隙間が出来る要因には「頭部の位置」も関係します。手指の形に意識を集中する術式二では、そこに意識を集中する際、頭は手指に近づきやすくなるので、ここで体部と頭部の連携が途切れてしまうと手指と腹部がうまく噛み合なくなります。この場合の頭部の位置は、術式二の施術を行いつつ頭部の位置を前後させると、ある境界から頭部が前に出ると全身が崩れ、その境界から引くと元に戻る(正しく連携する)という位置が見つかります。ただ、この境界から引きすぎてもいけないので、その境界を窓ガラスのようにイメージするとしたら、その窓ガラスの顔をぺったりと張り付けている感覚です。この状態を維持出来れば体の動き(連携)が少々崩れても、それが手指に影響することはほぼなくなります。これを実際に行うと、全身が正しく動き、手指も正確に動く反面、呼吸が相当に抑制されることになるので、慣れないうちは少し話した状態で行っても構いません(イザという時には張り付ける)。これが後々になると、その距離感を相手の状態と自分の施術の内容に応じて微妙に変化させるだけで、手技の効果が大きく変化することになっていきます。