手指の使い方

 

 大和整體では手技に一般的な手掌・拇指の他に、示指・中指・薬指の三指(もしくはこのうちの二指)の指尖を多用します。これは施術で体の状態を感じ取るという時に、手掌や拇指では鈍感なのでより敏感な三指に頼るということもありますし、拇趾より器用な三指を使うことで可能となる施術も多いからです。特に「関節の隙間に入る」といった時には、厚さのない三指は非常に適します(敏感さ・器用さ・小ささを兼ね備える)。しかしこの三指には手掌や拇指のような強さはないので、体部からの強い力に耐えることができません。しかし手部と前腕を一体化させて使うことによって、通常では弱い三指でも強い施術に耐えることのできるようになります。

 

 手部と前腕を一体化させて使う時の基本は、手部と前腕の前面(掌側)と後面(背側)の筋肉の張力を等しく揃えることです。これはまず、手部全体を真っ直ぐ伸ばした状態から指先から手全体を均等に丸めるように動かしていくと、ある角度で両者の張力が等しくなるところがあります。これは別の言い方に置き換えると、手関節周囲の筋肉の張力が均一になることで、「手関節」の感覚が消えるという感覚です(手部と前腕が一体化するような感覚)。この感覚を維持したまま指先に力を入れた状態で(前腕を含めた)手部を動かすと、手の動きに前腕が密接に連携して動くため、押圧などで指に強く力をかけてもその力は前腕へと分散されることになります(一般的な手指の使い方では指にかかる力が分散されるのは手関節までに限定される=力が指部・中手骨のみに集中してしまう)。

 

 ただし、これだけでは指部の負担が前腕にも分散されるだけなので、まだ指部にそれほどの強さはありません。これに肘関節・手関節に三軸の関節操作を加えることで指部自体の強度が増すことになります。ただしこの時の関節操作は、その動きが大きければ結果的に関節の自由度が失われ、手部そのものの動きを制限してしまうことになるので最小に抑えます。つまり見た目にはあまり変化がないほどの動きで肘関節・手関節を安定させます。具体的にはまず肘関節を「屈曲・外転(側の動き)・内旋」の動きで安定させると、隣接する手関節は僅かな「背屈:橈屈・内旋」で安定します。この時点で手部の関節が安定すれば、手部の筋肉に容易に強く緊張させることができるので指部(指尖)を肘に向けて強く引くよう意識します(指部は僅かに丸めたまま)。これによって手部全体が均一に固まるので、手指にも強い強度が得られることになります。あとはこの感覚を維持できる範囲内で手関節や指部を動かし、手技を行っていきます。

 

 これは「関節周囲の筋肉の張力が均一であれば、関節は筋肉により強く保護される」という仕組みを利用したものです(体部の関節でも同様)。関節周囲の張力が揃わない状態から押圧などで手指に強い力がかかった場合、その力は不安定な指関節や手関節にそのまま集中することになるので強い力には耐えきれませんし、無理をすればすぐに痛めてしまいます。しかし手部全体の諸関節を筋肉の均一な緊張によって保護しておけば、手部は相当の強さに耐えることができます。これを前提として、あとはそれぞれの指を隣合う指とどこか一点で「くっ付ける」ことで、三指が「一つのパーツ」となるので、、相当の強圧に耐えることができるようになります。この時、隣り合う指を強く密着する必要はありません。強く密着するとそれぞれの関節の動きが制限されてしまうので、三指を感覚的に一体化できればそれで充分です。