術式二の概要

 

 術式の二は体の「細部」を整えていく施術です。術式の一が「全体性」を重要視するのに対して、ここでは「部分」から全身が整うと考えます。これは「全体は部分を表す」「部分は全体を表す」という言葉と同じで、術式の一が「全体が整う時には部分も整う」と考えるのに対して、二では「部分が整えば全体も整う」としています。この場合の「部分」とは「局部に生じている非日常的な機能異常」ですが、簡単には過去の古傷や手術痕といった「自然回復が期待できない機能異常」と考えて下さい(日常生活を行いながらでは回復が期待できない問題)。そしてこれらは全身の機能を損なう「著しく強い支点」として、体の本来の動きを抑制している部位となっています。一般的な施術は見過ごされてしまったり、分かっていても「仕方ない」として扱われてしまう対象を、術式の二では「可能な限り正常な機能に戻す」ことに徹底していきます。

 

 こうした異常を改善するためには必要なのは「細部の組織から丁寧に機能を回復させていく」という緻密さです。関節なら足根骨一つでもその動きを丁寧に整え、筋肉ならその繊維1本1本の動きまでを繊細に整えます(大袈裟な話ではなく対象を僅かな局部に限定することで可能になる)。こうした施術は車でいえば「修理」ではなく「オーバーホール」といった感覚です。患部の運動単位の機能を可能な限り分解・再構築し、「体にとって使いにくい部位(邪魔な部位)」を可能な限り他と変わらず動く状態にまで戻します(大和整體の施術が「マニアック」と言われる所以です)。そうすることで、体にとっての「邪魔な部位」が消えれば、その邪魔を前提として構築されていた体の動きは再構築され、より本来の機能を発揮することができるようになります。「術式の一」の全体性によって治らないものは、その原因を「細部」に求めるということです。

 

 古傷など「一度壊れてしまった組織」の機能を完全に回復させることは叶いません。しかし実際の問題は、組織が壊れたことではなく、その機能を周囲が補う関係性が壊れてしまうことにあります(患部の回復ばかりに眼を向けて周囲との統合まで回復させなかった)。私たちの体は日常でその全ての機能を使っているわけではないので、その機能には必ず「機能的な余裕」があります。その機能的な余裕の部分を使って壊れた機能を「一定期間だけ高める」ように施術を行い、その期間に周囲との機能的な統合が図れさえすれば、壊れてしまった部位であっても周囲の補助を受けながら全体性の中で機能ができるようになります。しかし、こうした問題は体にとって「現在進行形の問題」ではないため、施術者にとっては「見えない問題」となっていることが殆どです。術式の一で可能な限りの「全体性の回復」を行うことで、それに噛み合ない細部が「浮き出て」くるのです。これを丁寧に、かつ確実に消し去るのが術式の二の施術です。