体の操法と目的

 

 術式の一の体の操法には多くの意味があります。それらは順次説明していきますが、ここではその中で重要な「体の静止」について触れていきます。まず、私たちは「体を正確に使う(動かす)」ということができないものです。これには幾つか理由がありますが、その一つは「身体感覚の偏り」です。これはスポーツなどで「自分は正しいフォームが出来ている」と思っていても、それをビデオに撮って見ると自分のイメージと随分違うことなどで分かります。私たちは体の中に「敏感な部位・鈍感な部位」「動かしやすい部位・動かしにくい部位」などの偏りを持っています。そうした偏りを持つ以上、自分では「全身を均等に動かしているつもり」でも、実際に動きには偏りに応じた違いが出てしまうものです。これは私たちの施術にも言えることで、自分が思っているほど正しい施術ができているわけではないということです。

 

 しかし、これだけのことであれば、先に説明した「全身を繋げて使う」や「体を丸く使う」といったことである程度まで修正することができます。自身の体の動きを客観視することができれば、どこに偏りがあり、どうすればそれを修正することができるかが分かるからです。ただ、こうしたことだけではどうしても修正の効かない問題もあります。それは私たちの体が持つ「無意識の動き」です。これは「揺らぎ」と言い換えても構いません。その背景にあるのは「関節の遊び」なのですが、私たちの体の動きは必ず「関節の動き」を通して行われます。体を正確に使うということは、この関節の動きを「どれだけ正しく制御できるか」に尽きるわけですが、その関節にある「遊び」というのは私たちが意識的に制御することのできない「僅かな動き=揺らぎ」を持ちます。この揺らぎが私たちが体を正確に使う上での障害となってしまうのです。

 

 大和整體の施術は、その力を一点に収束させる場合ならその範囲を2〜3mmと設定しています。施術の精度に1〜2mm程度の誤差が生じるのは仕方ないとしても、それが3〜5mmとなれば致命的なものとなります。そのためには関節の揺らぎさえ制御しなければいけません。関節の揺らぎを制御する方法は簡単で、関節の揺らぎが動作に影響を及ぼすのはそれが「筋肉の感覚」の中で行われるからです。関節の遊びが大きいということは、骨と骨が離れた状態にあり、両者の位置関係が曖昧になりやすいということです。そのため関節の制御を筋肉の感覚に頼らざるを得なくなるのです。これを意図的に関節を操作することでその遊びを最小に留め、その結果として関節における「骨と骨の位置関係」を明確にすることができれば、揺らぎを意図的に抑制して「体を正確に動かす」ことが可能となります。

 

 これを実践するための方法論が術式の一の「体の操法」となります。これは当然、これまで説明してきた「全身を繋げて使う」「体を丸く使う」ことの延長上にあるものです。実際にはそうした「体を正確に使う方法」が分かっても、それを実践できるようになるには相応の訓練が必要となりますが、そうした苦労以上に「体を正確に使う」ことのメリットは大きなものです。先に説明した関節の遊びから生じる僅かな揺らぎは、施術の精度を下げるだけではなく、施術を受けた受け手自身の体を著しく不安定にするものです(表面的には気付きにくい変化です)。大和整體ではこの体の操法は「精度を上げるための良策」ではなく、「正しい効果を得るための必須の要素」と捉えているのです。