女性向けの体の操法


 

 術式の一の体の操法は「体を固めての強圧」が主体となっていますが、これは男性向けの施術であるとも言えます。スポーツなどでも分かることですが、男性はその動きを「筋肉の力(腕力など)」に頼りがちなのに対して、筋肉で劣る女性では「全身のバランス」に頼ることでその不利を補うことができます。筋肉の力に頼って施術をしがちな男性に、その偏った動きを意識的に封じることで「全身のバランス」重視の体の使い方を身につけて貰うのが術式の一の体の操法です。しかし、もともと一定以上の力を出すのに「全身のバランス」に頼らざるを得ない女性が同じ操法を用いることに大きな「利」はありません。基本的な施術のイメージは同じまま、女性に向けた術式の一の体の操法をここで説明しておきます。

 

 術式一の体の操法は、最初は「体を固めての強圧」から始まりますが、それが目的とするのは「体を正しく使う」ことにあります。途中の路が違っても、行き着く先が同じであればいいわけです。先に具体的な方法から説明していくと、女性の場合は「体幹と頭部の安定」を優先させます。これは体幹と頭部が一体というイメージなのですが、顎を引くようにして頭部を体幹の軸上に乗せていくと、どこかで両者が一体になって「首が動かない(動かしにくい)」と感じる処があります。あとはこの状態を維持したまま施術を行います。これは首のないキャラクター(鉄人28号やハプティダンプティなど)などをイメージすると実践しやすくなります。女性の場合、この状態から施術を行うだけで大抵は術式一の「体の表面が均一」という状態になるものです(ならなくても微調整で実践しやすい)。

 

 術式一の体の操法で特に重要なのは「肩を下げること」です。これは「肩が浮いた状態」では腕力に頼ってしまうため、それを事前に抑制するための動作です。前述の「体幹と頭部の一体化」といった状態は、それだけで「肩が浮きにくい状態」を作ります。これが男性なら腕力に頼る傾向から、その状態からでも肩を浮かせようとしてしまうものですが、女性にとっては逆に難しいことになります。また体幹と頭部が一体化した状態は、四肢に多くの運動制限を設けることになるため、動ける範囲に制限がかかるものの、その範囲内で動いている限りは自然と主要な関節の遊びが均一化されやすくなります(結果的に全身の張力が均一に整いやすい)。「それでもうまくできない」という場合はどこかの力みに頼って動いている可能性が高いので、その時は体幹と頭部を一体化した感覚に加えて、体幹と頭部を下(腰部・腹部)へと押し込むような力を加えます。これは四肢に更なる運動制限を設けることになるので、その動ける範囲で全身が均一に整いやすくなります。

 

 あと、これは実践してみれば分かることですが、体幹と頭部を一体化するとそれだけで四肢の動きを正確に制御しやすくなります。これは体幹の軸が明確になることで四肢の動きを制御しやすくなることに加えて、頭部を固定することが脳の働きを安定させ、動作の制御を容易にするためです。男性が体を固めることに慣れ、ほどほどの力でも自分の体の動きを制御できるようになることと、女性がこの操法を無理なく自然にできるようになることとは、結果として同じ意味を持ちます(体幹と頭部を一体化させること自体難しい)。一応、これまで説明してきた「男性寄りの体の操法」に目を通して頂き、その上でここで説明した体の操法を基本として、足りない部分を「男性寄り」の説明の中から補って貰うことが理想だと思います。