体を末端からほどく

 

 いざ「体から支点を消す(解除する)」といっても、どこから手をつけたらいいのかは悩むところです。どこに支点があるかはある程度の経験を積んだ施術者なら「体の動きの中での引っ掛かり」などを頼りに見つけることはできると思います。しかし支点というのは他の支点を密接に結びついており(絡み合っている)、いきなり「強固な支点」を相手にしても、その機能を完全に解除することは難しいと思います。そうした場合の「指標」として、大和整體では「体の末端を対象とする」と定めています。体の末端というのは「支点の集合体」のようなものだからです。

 

 体に強い緊張がある場合、それは必ず手先足先(頭部も)の末端まで繋がっているものです。というよりは、体は末端を緊張によって固めない限り、強い緊張を行うことができません。これは例えば「上肢や下肢を固めろ」と言われたら簡単にできるのに、「胸部や腰部を固めろ」と言われてもうまくできないことと同じです。私たちの体は体幹部を強く緊張させたい場合、まず末端である手足を強く緊張させなければ体幹部を固めることができないようになっています。これは手足の動きの自由度や神経の発達度が体幹に著しく勝っているためと考えて下さい。

 

 そもそも緊張というのは一つの支点単体では強い状態を維持することはできません。必ず他の支点と結びつくことで強い構造へと変化します。こうしたことを私はよく「アメ玉」になぞらえて説明しますが、昔のアメはビニールにくるんでから両端を捻って包んであります。その片方でも解けてしまえば「包む力」は働かなくなってしまうわけで、この捻りの部分が支点に相当します。ある支点と支点が結びつくことで、両者の間には著しい緊張の安定状態が成立するわけです(アメ玉理論)。これを全身の中で大きく考えると、手先・足先という末端は、全身を緊張させるための格好の支点となります。これは同時に、手先・足先といった末端の支点(緊張)をほどかれてしまえば、体は強い緊張状態を保つことができなくなるということです。

 

 手先・足先の末端といっても、どこから手をつければいいのかが迷うところですが、ここでは本当の末端である指部とします。指部も5本あるうちで最も緊張が強い指を選べば、そこが全身=アメを緊張で包むための「端」ということです(全身のうちで特に重要な支点)。これを弛めることで、全身はそれまでの緊張を維持することが難しくなります。とはいえ、体からすれば「重要な支点」が消されるのを黙って待つことはしないので、対象の指が支点として機能しなくなれば、大抵は近隣の「他の指」にその支点としての機能を移行させます。その場合には、支点が移った指を次の対象とします(これを繰り返す)。末端の支点としての機能が一時的にでも消えると、上肢なり下肢なりの全体が一段階弛緩するので終わったことが分かります。