術式一の概要

 

 大和の「術式」は、そのどれもが施術の方法論であり、かつ体の訓練法(体の操法)となっていますが、全ての基本はこの「術式の一」となります。術式の一は「全身の機能を繋げる」ことに特化した施術で、施術そのものも自身の体を繋げる意識で行っていきます。体というものはその全身が統一感を以て機能している限りは簡単には壊れません。しかしその機能に偏りが生じ、それぞれがバラバラに動くようになると簡単に壊れてしまうものです。体は全身の組織がお互いにその機能を補いあうことで正しく機能するようにできています。こうした安定した状態である限り、少々の不調や機能低下は問題となりません(少々の機能的な問題は「全体性」によって補うことができる)。しかしこうした全体性が機能せず、個別の機能に頼って動くようになれば、僅かな問題でも簡単に壊れてしまうものです。

 

 体がバラバラになった状態というのは、簡単には「全身の各部で筋肉の張力が不均一な状態」です。体のどこかに強く緊張が生じれば、体はその緊張を中心として偏った動きを強いられることになります。偏った動きは新たな強い緊張=支点を生み、その繰り返しの中で体は本来の全体性を失い、不安定な中で機能しなければいけなくなります。こうした考え方を前提とすれば、多くの痛みなどの愁訴は、患部に問題が生じたから起こるのではなく、患部に問題が生じるような使い方を強いねばならない体のバランスの崩れから起こるのだと考えることができます。術式の一はこうした体のバランスの崩れ(全体性の崩れ)を単純に「筋肉の張力の問題」と置き換えて、その修正を施術の目的とします。簡単には「全身の筋肉の張力が均一になれば全体性が回復する」という考え方です。ただしここでの「全身の筋肉の張力」というのは表面的なそれではなく、深部の筋肉までも含んでいます。

 

 そうした施術を行うために、術式の一では自身の体にも「体の全体性」を強制します。これは施術者自身の体が「全体性を保った状態の中で行われる」からこそ、受け手の体も同じように機能するということと、全体性という感覚を日常化することで多くの有益な感覚が得られるという二つの理由によります。ただ、実際に自身の体で確実に全体性を保つということは難しいものです。その理由は「体の無意識の動き」にあり、自分では全体性を保てているつもりでも、無意識領域ではそこに不要な動きが残ってしまうためです。術式の一ではこれを「自身の緊張によって体を固める」ことで一切の無意識領域の動きを抑制することから始めます。最初は指一本動かすことも叶いませんが、この「強制的な全体性の維持」という感覚に慣れて貰うことで、次第に強い力を用いなくてもこうした状態を維持し、普通に施術を行うことができるようになります。最初は強圧から初め、それを日常的な力でも実践できるようにしていくのです。