体のイメージをプラスに

 

 体に対するイメージというのは人それぞれです。それが結果として「プラスのイメージ」であれば、その人の体は活性化しやすく、「マイナスのイメージ」であれば活性化はしにくくなります。およそ治療を受けにくるような人の多くは、体に対して「痛み」や「不快感」といった多くのイメージを抱えている人ばかりなので、そうした条件の中では施術の効果も充分に期待できないことが多くなります。例えばスポーツが好きという人では、スポーツの中での「充実感」や「達成感」をよく経験しています。こうした人にとって体というのは「自分に楽しみを与えてくれるもの」というプラスのイメージが強くなり、そこで「頭と体の結びつき」も強くなります。しかし、同じスポーツをしていた人でも、ケガに悩まされたりで苦しさが優先してしまうと、その人にとっての体というのは「できれば見たくないもの(眼を背けたいもの)」といったマイナスのイメージが強くなります。

 

 「頭と体の結びつき」というのは双方の距離感のようなものですが、この距離感が近い人というのは体の反応に敏感な人です。前述のスポーツに限らず、食事の満足感や睡眠の幸福感など、体に生じる「快・不快の感覚」が強く意識に反映されるということです。当然、不快なものは避けたいので、無意識に体にとって「快感覚」に繋がるような生活行動をとるようになります(本能的な感覚が強く働く結果)。こうした人に施術を行うと、その内容が少しでも「プラス(快感覚)」であった場合は、敏感に反応してくれるため効果が相乗的に大きくなります。施術の内容が施術者の不手際から「マイナス(不快)」な場合は、やはり拒絶という反応で敏感に反応をしてくれます。いいものは受け入れ、悪いものは拒絶するわけですから、どちらにせよ悪い方向には進みにくいものです。

 

 これに対して両者の距離感が遠い人というのは、前述のように体にマイナスのイメージが強い人の他に、頭で考えて行動することが多く、そのために体の反応を抑制する人も含みます(理性で本能的な感覚を押さえ込んでしまう)。どちらも「できれば体を見たくない」という点では同じです(理性優先の人にとって本能的な感覚は抑制の対象)。こういう人では少々の「プラス(快感覚)」など「知ったことではない」となってしまいますし、これは「マイナス(不快)」の場合でも同じなので、ちょっとしたことでも簡単に壊れてしまいます。「施術が効きにくく壊れやすい」わけで、面倒なことこの上ありません。

 

 施術で重要なのは、体に対する意識にマイナス面が強い人に対して、それをどうやってプラスに変えていくかです。治す治さないはその後の話で、まずは自分の体に「興味」を持たせなければ話になりません。もちろん肩こりがすっきりとれれば、その場は「楽」という感覚から体にいいイメージを持ってはくれます。しかしそれは「興味」とは違います。体についての「快感覚」というのもいろいろですから、その人にとって「おっ?」と思わせるような新しい感覚(その人が忘れてしまっている感覚)を経験させ、体に興味を持たせることで「ただ楽になる」のではなく、「機能が向上・活性化していく」という感覚を植え付ける必要があります。

 

 まずは自分の体に興味を持たせる。そして次に、自分の体がどういう状況にあるのかを正しく認識させる。もちろんこれは「体が悪いこと」を認識させることと同じなので、そこに「良くなる可能性」を両立させなければ意味はありません。徐々に体が(快感覚とともに)よくなっていく過程で、自分の体の状態を理解できるようになり、それを自ら「改善したい」と思わせるのです。そういう意識が芽生えた人では、日常生活でも体に対する意識が高まることになるので、体を大事に使うようになってくれるものです。

 

 体というのは正しく使えばそこに「快感覚」が伴い、体を動かすことが好きになっていくものです(スポーツなどといった意味ではなく行動的になるという意味)。そこに「本能的な感覚」が強く伴えば、自然に悪い刺激から身を遠ざけ、よい刺激の中にいようとするものです。「治る・治らない(自然治癒を含む)」の基本は、体が自分にとっての「よい協力者/頼りになる協力者」というプラスのイメージがあることが前提であり、そこではじめて「頭と体」が一体となって機能します。これは施術に限った話ではなく、言葉による生活指導などでも、ただ「鍛えなさい」では体にプラスのイメージは持てません。いかに体との関わりに「愉しさ」を植え付けるかなので、患者さんが自分の体に興味が持てるよう(自分の体を好きになれるよう)、いろいろ試してみて下さい。また、こうした話は施術者自身にも共通して言えることです。施術者自身の体に対するイメージがマイナスでは、そこでできることも限られてしまいます。日々の施術も工夫次第で「自分の体に興味を持つ(自分の体を好きになる)」ことへと繋がっていくことを忘れないで下さい。