足部の機能回復 2

 

 体を整えようとする「上向きの力」と、体を歪ませようとする「下向きの力」がぶつかり合う境界線が膝関節より下位にある場合、足部では体を正しく支えるその機能が大幅に低下していると考えられます。それは運動機能の問題であると同時に、内臓側に深刻な問題をきたすことに繋がるので、体の上位にどんな問題が生じているとしても最優先に改善すべき対象となります。ただ、実際には一定以上の不調を抱え、それが慢性化しているような体のほとんどはこうした状態にあるものです。その時、足部は「体を支えるために能動的に機能する部位」ではなく、ただの「つっかえ棒」として「受動的にただ体重によって押しつぶされるだけの部位」でしかありません。本人は正しく動いていると感じていても「体を能動的に支える」という役割は果たしていないのです。前置きが長くなりましたが、これが大和整體が施術で「足部の機能」を特別視する一番の理由です。

 

 この足部の機能を施術によって回復させ、二つの力のぶつかり合う部位を膝関節より上へと押し上げる。これが基本の施術で最優先すべきことであり、体の機能を整える施術というのはそれ以降の話となります。二つの力がぶつかり合う部位が膝関節以下である場合は、基本的に全身すべての機能が誤った状態の中でしか動けないと考えるので、いくら施術によって各部の機能を正しても、それを維持するだけの力が体の側にないのです。つまり力のぶつかり合う境界が膝関節を超えない限り、足部以外に行う施術は全て、一時的な効果に繋がることはあっても、根本的に体の機能を正すことには繋がらないということです。人が立って動く時、その中で信頼できる情報は三半規管の平衡感覚と、眼で見た景色による体の傾きの修正と、地面を掴む足部の感覚の三つだけです。そしてこの中で足部を正しく機能させることだけが、他の機能を大きく補うことができます(下半身の安定によって体のバランスが整いやすくなる)。つまりは人が「立ち・動く」という時に最も信頼すべき機能と情報が「足部」に集中しているということです。

 

 足部の機能について少し詳しく説明すると、それは足裏や距骨(や股関節)に多く存在する「感覚受容器(メカノレセプター)」が深く関係しています。私たちの足は、その圧力に関する感覚受容器が発達しているため、体の僅かな傾き(足裏や距骨への圧力変化)を感知し、それに応じて無意識に姿勢の修正(主に足部の機能に頼る)を行うことで「簡単に立てる」仕組みになっています。しかし足部の機能が低下することでこの感覚受容器の活動が低下すると、それを全身各部位の動きや緊張によって補わざるを得なくなります。この時に必要となる全身の筋肉の緊張は著しいため、そこで交感神経の過剰な活動が必須となるのです。この交感神経の働きは、当然相対的に内臓機能の働きを大きく抑制してしまいます。足部の機能を正常化させることで感覚受容器の活動をも正常化させることができれば、それだけで全身に生じている「緊張による過剰な負荷」は不要となり、体が正常に働くためのきっかけとなるのです。