足部の機能の充実

 

 これまで基本となる施術を「支点の解除」「連動の回復」と説明してきました。その技術的な詳細は術式の説明に譲りますが、それほど機能の乱れていない体であれば、ここまでの施術で一定の効果は期待できるはずです。ただこれだけで不足な場合には、その施術の精度をより高めて再度行うと同時に、その対象を局部へと集中させてくことになります。その対象となる局部は「足部(下腿を含む)」で、足部の機能の充実を基盤として全身の諸機能の正常化を図っていきます。この前提になっているのは「地に足を着く」ということで、体の全ての動きはまず「地面に正しく接地する」ことから始まると考えます。これは立つ(動く)という時に、体の機能が「どこから始まるか(何を基準として機能が統合されるべきか)」と考えた場合に、それが体の上位にあるか、下位にあるかの違いとなります。

 

 体は立位において、まず「地面を掴む」ことで体が安定するようになっています。地面を掴むことで下半身が安定し、その安定を土台とするからこそ高い機能を発揮できるようになっています。しかし私たちの体にはいろいろな「癖」があります。その癖ゆえに「自身の体の状態を保つこと」を優先させてしまえば「地面を掴む」ことはできなくなります。その結果として、不安定な下半身を補うために、腰や肩を緊張させることで体のバランスを取らざるをえなくなります。これが「体の機能が上位優先の状態」であり、例えば「何かを考えながら歩く」というだけでも、人は「地面を掴む」ことはできなくなります。そして現代人の殆どの人がこれに相当し、地面を掴んで立つという当たり前のことができなくなっています。誤解されやすいのが「私は体を鍛えている・よく歩いているから大丈夫」という思い込みで、正しく使えていなければいくら鍛えていても意味はありません。

 

 「地面を掴む」ことに必要となる足部の機能については、先に「身体各部の捉え方(足部と下腿部)」で触れましたが、大和整體では体が抱えている「機能的な誤り」を正すには、まず足部の機能を整えることを優先と考えます。施術によって足部が徐々に正しく機能するようになると、それまで足部の機能不足を補うために生じていた「全身の諸機能への負担」が軽減され、より正しく機能できる状態へと戻っていきます。中でも重要となるのは、足部が正しく機能するということは、そのまま下半身全体が正しく機能するということに繋がり、そこには「下腹部」の機能までもが含まれていることです。体は運動器のみが正しく機能しても、そこに内臓機能が伴わないのでは意味がありません。地面を掴む(地に足を着く)ことの意義は、全身(主に運動器)が正しく機能する必須条件であると同時に、内臓機能の起点となる下腹部(小腸・大腸)の機能を活性化させることにあります。

 

 また、体を足部から整えていくということは、体を下位から上位へと順次整えていくということであり、計画的かつ段階的に身体機能を整えていくことに繋がります。そもそも体は脳に近ければ近いほど機能の安定度が高く、施術によって確実に変化させることが難しくなります。それ故に「頭部への施術」などは効果が高いとも言えるのですが、術後の安定度(効果の持続)を考えれば、より確実性が高いのはやはり脳から最も遠い足部となります。ただ、足部への施術というのはその効果を足部のみに限定するものではありません。足部というのは全ての動作の起点となる部位なので、この部位にすぐには戻らないような確実な変化を引き起こすことができると、それは必ず全身の変化へと波及していきます。こうした全身への影響度の高さも足部の施術を重視する理由となっているのです。