全身で押さえ込む

 

 これは「対象を掴まえる」の続きとなりますが、掴まえた対象はそれを全身で押さえ込んでこそ意味があります。これは相手の指先を触れるような場合でも同じで、対象の大きさに関わらず全身で押さえ込むことでめるか否かによって体の反応が大きく変わってしまいます。これは考え方の問題で、指先一本(その先端)を掴まえるということは、指一本を相手にしているわけではありません。体はその全てが機能的に繋がっているわけで、この時の指というのは「全身の代表としての施術部位」となります。押さえ込む部位・対象がどこであれ、それはその時の全身の代表なわけで、そこには全身の力が伝わっていることになります。よってそれを押さえ込む施術者の側も、全身を以て押さえ込むことで初めて「正しく掴まえる」ということが可能となるのです。これは大和整體の施術が「常に全身を使う」ことの重要な理由の一つでもあります。

 

 これは練習ですが、任意の指先一本、その先端を指で掴まえてみます。指尖はその感覚的・構造的中心がはっきりしているので、触れた時点で自然と掴まえる対象が見つかるため、練習に適した部位です。これをただ手先の動きだけで掴まえただけでは体に大きな変化は起こりません。しかしこの掴まえる動きに全身を連動させ、全身の力を使い一瞬でうまく掴まえると、それだけで受け手は体の自由を大きく奪われることになります。これは指先を通じて「全身を掴まえた」ということであり、これによって指先への施術による変化は全身に及ぶことになります。施術の際に「常に全身を掴まえる」ことが正しいわけではありませんが、まずはこれが出来なければ話が進みません。どんな施術の時も常に全身で押さえ込みながら対象を掴まえることが出来る。これによって、対象によってその掴まえ方(その範囲)を状況に応じて任意に設定することが出来るようになっていくのです。

 

 この「全身で押さえ込む」という動作は、施術における手指の動きと体の動きが一致しているということで成立します。基本的には手指を含む全身の関節が、全て同じ速度・同じリズムで動くことで、手指が対象を掴まえることがそのまま全身で掴まえるということに繋がります。この時、全身の動きに不均衡があると、その差が緊張となって全身で掴まえるという共同作業を崩してしまうだけでなく、その緊張から体の安定が崩れ、その結果として「体が浮く」こととなってしまいます。「押さえ込む」という感覚は言葉の印象そのままに「上から押さえ込む」ことで成立するものであり、体が僅かでも「浮いて」しまえば、押さえ込むことは出来なくなります。施術の対象となる一点が相手の体の代表である以上、施術者側もそれに全身で体するのは当然のことであり、まずはこれで対等の力関係が成立することになります。その上で施術者側が受け手の体に対して施術に於ける優位性を得るためには、相手の体を押さえ込むことで可能となるのです。