直接法と間接法

 

 按法八療はその刺激を物理的に伝える「直接法」と、感覚的に伝える「間接法」に分けることができます。例えば按法八療で特徴的なのは「内臓の癒着の剥離」なのですが、内臓の癒着(軽度の癒着)を取り去るといっても、手で実際に触れることができる範囲には限りがあります。どうしても手指が入らないような部位(腎臓の前側とか)については、力を深部へと伝達させることで間接的に力を伝えます。とはいえ、大和整體の直接法は「体のどんな部位でも直接に触れて施術できる」ということを前提にしているので、通常の意味での「手が届かない部位」とは意味が大きく異なります。

 

 大和整體の直接法を行う際、その前提となっているのは「体は繊維構造である」ということです。体が繊維構造である以上、そこには通常は意識されないような「隙間」があります。この隙間を使うことで、通常では触れることができない部位まで、直接手指で触れて施術を行います。これは力ではなく「組織を避ける」ことでのみ可能となる独特な技術です。この方法では「胃の裏側を直接触れる」「脊椎を前面から直接触れる」「運動器の隙間から骨に触れる」といったことは当然であり、可能な限り、体のどんな部位でも直接触れることができるよう訓練します。これには、そうした部位を「直接触れて感じる」ことにも意味があります。一般的な施術では、そこにどうしても「体を体表から触れることの限界」という問題が生じるものですが、体の隅々までを直接触れて実感していることにより「体表・深部を等しく扱う」という感覚を身に付けて貰うのです。

 

 この直接法を補助する間接法は、直接法で対応できない部位に有効であると同時に、直接法では適さない状態にある組織にも有効な施術方法です。基本の段階ではあくまで「直接法で扱えない部位」を補うために用いるのですが、それは「体の中で扱えない部位」をなくすという段階での話であり、結果的に体のどこでも自在に力を加えることができるようになれば、施術は「直接法と間接法のどちらの刺激が適しているか?」という判断の中で行われることになります。力を間接的に伝えるというと、その力が直接法のそれに比べて曖昧かつ弱いものと考えられやすいのですが、大和整體の間接法はあくまで「面・尖・側」を利用します。それは力の形状を明確に定め、かつその性質を硬軟自在に変化させることから始まります。よって組織に直接刺激を加えない間接法であっても、そこに直接法のような強さと正確さを兼ね備え、かつ同等の変化を引き起こすものでなければなりません。「尖」なら体の奥底にある2〜3ミリ大の組織にその力を収束させる正確さを理想とします(かつ対象以外の組織には一切力が及ばないよう力を限定する)。

 

 直接法・間接法に関わらず、体のどんな部位であれ、任意の力をそこに伝達させることができるということは、施術における「制約(体表から施術することの限界)」がなくなるということです。こうした制約がなくなることによって、人は初めて「治すための全ての可能性」を考慮することができるようになるのだと思います。この「制約」をなくすために「按法八療」という手技の方法論が存在します。