力の量と体の反応

 

 施術に用いる力の強さについては強弱さまざまですが、これを先の「抵抗」という観点から説明していきます。抵抗とは術者が用いる力の量に比例するので、強圧には強い抵抗が、日常的な「触れる」という範囲内の力には弱い抵抗となります。これは単純に触れる=刺激と考えて、刺激が強ければ相応の抵抗が生じるということです。ただし弱圧といわれる極度に弱い力については、体はそれを「刺激」として認識しないことも多く、そうした場合はほとんど抵抗が生じないということになります。

 

これは術者から見れば強い力は効率が悪く、弱い力ほど効率がよいように感じられますが、受け手の体にとって重要なのは「刺激」に対する「反応」です。体はそれが何であれ、周囲からの外力による干渉を受けると、そこで生じる「変化」に対して適応するための「反応=応答」を行います。自身が保っていた恒常性(その人が持つ機能的なバランス)は外力によって僅かでも「干渉」を受けると、それに対する防御や修正が必要になるということです。抵抗とは外力による刺激を体が正しく「認識」しているということであり、これによって体は外力による干渉を受けても自らの恒常性を保つことができます。

 

これを前提とすると、抵抗が生じにくい弱圧は、刺激によって体は変化しているにも関わらず、体がそれに対して正しく応答ができないということです。体は外からの干渉に対して、それが受け入れるべきものか、拒否すべきものかを常に取捨選択しています。受け入れるべきでない力に対しては緊張による遮断を行い、受け入れるべきものは自らの恒常性を保ちつつ変化に繋げていきます。弱圧ではこうした取捨選択が働かないので、受け手の体にとって「適さない」手技が行われた場合に、体の根本的な機能やバランスが崩れやすくなります。総じて強圧による施術が術後に体が「安定」しやすく、弱圧による施術では「不安定」となりやすいのはこのためです。

 

大和整体では基本の手技に強圧を多用します。強圧から押圧の感覚を覚えていくと、それに慣れた時に力を弱めても同じ感覚、体の操法で手技を行うことができます。強圧と弱圧を同じ感覚で扱えるということは、どんな力を用いる時でも「同じように」行えるという点で大きな意味を持ちます。そして強圧・弱圧の双方を同じように使えるようになると、その双方の利点を持った「強く」も「弱く」もない「中圧」が大きな効果を持つようになります。「中圧」の利点は受け手の体への負担の少なさに加え、手技による変化の体への馴染みやすさ(受け入れられやすい)があります。実際の施術では受け手の体、状態に応じて、強圧・弱圧・中圧を使い分けていきます。