基本術式四種の概要

 

 術式八種については「基本の説明」で簡単に扱いましたが、術式に入る前にここで基本の四種の施術の内容について少し説明をしておきます。

 

術式一


 術式一は体の体を大まかに整える施術です。施術内容そのものよりは、施術を行うための「体の操法」に特徴があり、全身を固めることで均一化させ、その安定状態を維持しつつ施術を行うことを前提とします(静の施術)。こうした体の使い方は「支点」の解除に有効に働くため、体の正常な働きを阻害している支点を効率よく消していくことができます。施術の目的は主に連携や連動の回復にあり、身体機能を整え、その状態を安定させることで結果的に「交感神経な過剰な働きを抑制する」ことまでを目的とします。全身のバランスを見据えて施術を行うという点では、一般的な施術と大きな差はありません。

 

術式二


 全身のバランスを重視する術式一に対して、こちらは体の細部を重視する施術となります。「部分は全体を表し全体は部分を表す」の言葉のように、全身の問題が細部の問題(既往歴など)によって引き起こされている場合は、原因となっている細部を改善するしかありません。そのために通常の施術とは異なり、細部を詳細に扱うことに特化した施術となります。術式一を「マクロ的な視点の施術」とすれば術式二は「ミクロ的な視点の施術」といえます。一度の施術対象は局部ですが、こうした施術を全身の各部について習熟することに意味があるため、結果的には全身をオーバーホールするような感覚の施術です。

 

術式三


 これまでの術式一・二は施術の対象が運動器でしたが、術式三が扱うのは内臓となります。考え方は「内部(内臓)が整えば全体も整う」ということを前提としており、内臓そのものを施術の対象とし、その機能の正常化を以て体そのものを整えていきます。ただし対象とするのは「内臓の生理機能」ではなく「物理的な動きの機能」に限ります(生理機能を扱うのは後の術式)。主に臓器間の隙間を通じて行われる物理的な動きの正否を正す施術で、内臓の隙間を関節と同じように捉えることで、臓器間の自然な動きを回復させていきます(その結果として間接的に内臓の生理機能も回復するという考え方)。

 

術式四


 術式一から三は全てが「静の施術(体の静止を重要とする)」であるのに対して、術式四は「動施術」となります。これは体を動かす・動かさないといった違いではなく、体の安定を「止める」ことによって実践するか、「止めない」ことで実践するかの違いです。簡単には前者は体を「固体」として捉え、後者では「液体」と捉えるようなものです。この施術は「体の一切を止めない」という制御の難しい方法になるので、「動の施術」といいつつも、ほとんど体を動かすことはできません。その代わりに手が触れた対象については「無条件に弛緩させる」という独特の効果を持ちます(機能を整えるのではなく緊張を弛めることに特化した補助的な施術)。

 

術式一から四の整理

 術式一から四は、それぞれの術式を順番に行っていくことで、体を段階的に整えていく施術です。まず術式一で全身のバランスを整えますが、これで整わない場合は体のどこかに既往歴などの「体が治らない何らかの要因」があると考えます。これを扱うのが術式二です。これでも治らない場合は、すでに体の外側(運動器)が原因ではないとして、体の内部(内臓)に原因を求めます。これが術式三です。これまでの術式はすべて「静の施術」ですが、これで治らない場合は「静の施術」の限界と考え、これを「動の施術」へと切り替えていきます。これが術式四です。単純な説明ですが、各術式なりの「体の整え方」を順次覚えて貰い、それぞれを正しく使い分けることで体を各機能ごとに整えていくことが目的です(治すためにいろんな施術を混ぜこぜにしない)。

 

 この四種の術式は、ただ順番に覚えればそれで終わりというわけではなく、術式二を扱えるようになってからまた術式一に戻ると、より正しく使い方に気付くことができるという反復性を持っています。そして、いろんな術式を反復しながら何度も繰り返すことでしか、正しい使い方は身につかないのだと思います。実際には最も基本の筈の「術式一」を正しく行うことが最も難しく、これを理想的に行えるようになれば、単純な施術だけで相応の高い効果を得ることができる筈です。大和では施術というものについて「どれだけ素晴らしい技術を持っているか」よりも「どれだけ基礎を忠実に行うことができるか」を優先します。技術は後からいくらでも覚えられますが、基礎というのは最初の時期にしか覚えられないものです(いろいろ知ってしまった後ではシンプルな基礎に集中することが難しくなる)。