体の癖と施術

 

 私たちの体の動きには各人の生活習慣や好みに応じた「癖」があります。ある施術を教わり、実践するという場合に重要となるのは「教わった通りに正しく行う」ことですが、大抵はここに無意識の「癖」が加わってしまうことで、自分では正しく行ってるつもりでも実際には「自分なりのやり方」に変えてしまっているものです。問題なのはそれが「無自覚」の中で行われてしまうということで、無自覚で行っている限りは修正をすることもできません。これを修正するためには「いかにして自身の体の癖を意識に上らせるか」となります。そして、そのために必要となるのが「型」です。どんな習い事にも「型」がありますが、型を正しく実践するための障害が「個人の癖」であり、人は決まった型で動くことを強いられた時に、初めて自身の癖に気付くことができます(最初は周囲から注意されることで実感する)。

 

 武術などでは「型」の訓練を徹底することで、長い年月をかけてそれを身につけさせ、またその中で「型の意味」に自分から気付かせていくという方法をとります。自身の癖を時間をかけて消していき、体の動きを「偏ったもの」から「素直なもの」へと変えていきます。施術においてこうしたことが必要な理由は、私たちの施術が受け手の体と「繋がる」という点にあります。私たちの体の動きが自然で素直であれば、触れているだけでも受け手の体はよくなります。もちろんそうした体から施術が行われれば、その効果はどれも理想的なものとなります。しかし個人の癖に凝り固まった動きで触れてしまえば、触れているだけで受け手の体を壊しかねず、かつどんな施術も本来の効果には繋がらなくなります。これは「施術者の体が自然な理想体でなければいけない」ということではなく、施術者が自身の体をよく把握し、かつ制御することで不要な影響を与えず、施術を正しく行うということです。

 

 とはいえ「体の正しい使い方」というのも考え方次第でいろいろあるので、ここでは「大和整體なりの正しいと思う使い方」について説明していきます。大和整體では上記のような「型」というほどの決まった動きを定めているわけではありませんが、「術式」という形で目的とする施術ごとで段階的に体の使い方を定めています。ただ「術式」ごとに定めている「体の操法(型)」はそれぞれが特定の施術に特化したものなので、そこでは各術式で「可能となる施術」も限定されてしまうことになります(目的とする効果に対して体の機能を特化させる)。これに対してここで説明する内容は、一般的な施術全般に応用できる汎用性の高い体の捉え方・使い方となります。これは言い換えれば「特定の術式を行う時以外にも守ってほしい最低限の体の捉え方・使い方」ということです。