術式区分 八種 |
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まず初めに、整体の前提である「体を整える」ということには、その整える対象が「身体機能のある一面」に限られていることが前提となります。これはどういった組織を施術の対象とするか(骨・筋肉・内臓など)、どういった機能を改善していくかなど、整える対象を決めるからこそ「体が整う」ということです(私たちは体の「全て」を整えることはできない)。しかしその反面、「体の一面を整える」ということは同時に「他の面が崩れる」という、体全体のバランスを崩す可能性も孕んでいます。
体はどんな悪い状態にあっても、その状態なりに「可能な限りでの機能の統合」を図っています。こうした体に対して、その機能の一面だけを整えようとするということは、体がそれまで持っていた「バランス」を崩すことに繋がります。仮に「歪んでいる姿勢を整える」という施術でも、体の歪んだ状態なりに諸機能が統合しているわけで、これを「真っすぐにする」ということは、その体のバランスを崩すことに繋がります。その上で、私たちの行う「体を整えること」が有用であるためには、ある一面の機能を正すということが、結果として他の組織・機能にもよい方向へと作用する場合に限られます。これは理想論でいえば、施術をきっかけに「体全体がよりよく統合していく」ということです。
そのためには、自身の「体を整える施術」が、施術後に全身へどういう変化を与えるかまで、把握しておくことが重要となります。難しいことですが、そのためには「あれもこれも整える」という目先の効果ばかりを追うような施術は危険なわけで(体が無軌道に変化しやすいため術後の変化を予測しにくい)、体に応じて「整える対象」を厳密に特定しておくことが理想です(後の変化を想定しやすい)。そうなると「特定の対象(整える対象)」ごとに、それだけで全身を整えることができるような一貫した施術の方法論が必要となるわけで(仮にそれが「筋肉の張力」ならどんな些細な筋肉までも同じ方法論で整えることができる)、これを前提としているのが大和の「各術式」です。
術式は「基本四種」「応用四種」の計八種で構成されています。基本四種はその対象を一般的な「運動器」に限定しており、応用四種は内臓も含めた「身体組織の全て」を対象としています(この資料で主に扱うのは「基本四種」までです。それぞれが異なる対象を整えるとしており、異なる対象を整える方法を段階的に覚えていくことで、それが最終的には「体の多面的な機能の統合(体全体の機能が整う)」に繋がると考えるのです。
これはどんなテクニックでも同じことですが、誰にでも「うまい人の形を真似る」ことはできます。しかし基礎ができている人とできていない人では、施術の効果は雲泥に違います。術式はテクニックではないので、形を覚えることに意味はなく、あくまで一つの術式を使いこなし、自身の身体感覚が一定にまで向上することで次の術式へ進めるようになっています。これは私自身、肝に命じていることですが、施術は「自身のレベル=身の丈」に合ったものを行うことが最良です。自身の身の丈に合わないテクニックを形だけ覚えたとしても、それは正しい理解に繋がらないだけでなく、中途半端に理解してしまうことから正しく理解する機会を失うことにもなりかねません。
基礎というのは正直で、基礎が上達すればするほど、同じ施術を行っていても自然に効果は上がっていきます。また基礎というのは、そこに時間をかければかけるほど、その難しさが理解でき、自身に足りないものが理解できるものです。そうなれば、自分の内ですべきことも明確になるので、外に目新しい技術を追い求める必要はなくなります。また、基礎を充分に理解できるようになった時点で「外」に目を向けたとしても、その時には新しい技術をずっと深く理解できるようになっていると思います。施術は「治す」ことに拘わってしまうと、目先の技術に囚われがちになります。どんな療法であっても「いまは自分のできることをやる(身の丈)」。そして基礎を積んでいくことで「いずれ自然に治せるようになればいい」というのが理想なのだと思います。
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