按法八療 1

 

 大和整體ではその手技に「按法八療」というものを用います。これは手指の使い方や、その力の伝達の仕方を区分したもので、全ての施術の基本となります。例えば、手指によって体へと力を伝達させる場合、その力が一点に収束するものであるか、周囲へと均等に分散していくものであるかによって、得られる効果は全く違うものになります。こうしたことを意識して行うようにするのが「按法八療」です。按法八療とは次の四つの小区分と二つの大区分の組み合わせです。

 

◆大区分
 面・・・手掌や指腹など「面」としての刺激
 尖・・・指尖などの「点」としての刺激
 側・・・手刀や手指の側面など「線」としての刺激
 移・・・刺激を触れている部位から遠位へと送る刺激
◆小区分
 連続・・持続性の刺激
 断続・・断続性の刺激

 

 大区分の「面・尖・側・移」というのはその刺激の「形」であり、小区分の「連続・断続」というのはその刺激が連続性のものであるか、間断を踏まえた断続性のものであるかを示しています。小区分は一般的な施術ではあまり縁のないものなので、ここではその説明を大区分に限定していきます。

 

 大区分の四種は、「面・尖・側」までがその刺激の形を表すもので、残る「移」はその力を遠位へと「跳ばす」方法です。これは、手指が触れた部位からその力がどういう形状で伝わっていくかを表した「面・尖・側」と、触れた部分から広がるのではなく、直接遠位に作用する「移」の違いです。「移」も特殊な施術ではあるので、ここでは主に「面・尖・側」に話を限定していくことにします。

 

 大和整體では手技による力の伝達を「点・線・域」の三つに区分しています。点というのは一点に力を収束させ、かつそれが体を貫通するような刺激です(鍼による刺激をイメージして下さい)。次は点を一方向に伸ばして線状にすると、刺激はその線状の「範囲」を持ちつつ深部へと伝わっていきます(これは包丁のようなものをイメージして下さい)。これをさらに周囲へ均等に広げると、その刺激は周囲に自然に伝搬していく「域」となります。誰しも普通に「指圧」のように体のどこかを押せば、その刺激は周囲に一定の広がりを持つ「域」となるものです。これを「点状」「線状」という範囲に限定する、またはその広がりを意図的に制御して「域」とする、そうした力の伝達の仕方を大和整體では重要と考えます。順序がバラバラになってしまいましたが、「面・尖・側」はそれぞれ「面=域」「尖=点」「側=線」となります。それぞれで手指のどの部分を使うかが変わってきます(指先だけでの面・尖・側や肘頭だけでの面・尖・側など体のどこでも行えます)。

 

 「面・尖・側」の三つは、簡単にはジャンケンに例えることができます。面は「包む」という性質を持った「パー」。尖は「突く・刺す」という性質を持った「グー」。側は「切る」という性質の「チョキ」です。例えば面は手掌で触れる一帯を均一に変化、安定させることができます(基本は球形の均一な広がり)。尖は体の局部へと突き刺すような「細く強い刺激」として、大和整體が重視する「支点(その中心)」の解除に役立ちます。側は手指の力を刃物のような線状へと変化させ、筋肉間の隙間や内臓間の隙間へと自在に入っていくことができます。目的とする対象(その状態)によって、どういう刺激を加えていくのかを選択していきます。

 

 ただ、全ての基本となるのは「尖」となります。全身の力を一点にのみ収束させ、その状態を堅持するためには手指だけでなく全身に厳密な身体操作を必要とします(面・側でも身体操作は必要です)。この「面・尖・側」の刺激の形というのは、正しく行うとそれぞれが全く違った身体反応を得られるので、それぞれの形を手指で厳密に再現する必要があります。