三軸の関節操作 2

 

 「三軸の関節操作」は、「屈曲・伸展/側屈/回旋」の三軸の動きを複合することで、関節の遊びを消す体の操法であることはすでに説明しました。その具体的な方法論は「術式一」で扱うとして、ここではそこで起こる仕組みについて説明しておきます。三軸の動きを組み合わせることで関節の遊びを消失させると、関節を構成する二つの骨は必然的に「関節構造にとって最も無理のない位置」に収まることになります(ただし力づくでそこに押しとどめているだけです)。よってそこからの関節の動きは、ほぼ正しい運動中心で行われることになります。これはあくまで意図的な操作によって行っているので、運動中心に僅かなブレは生じますが、ここでは問題としません。重要なのは関節内部の圧力を均等に保つことです。動作中に関節内部の圧力さえほぼ均等に保っていれば、多少運動中心にズレが生じようと、関節の位置情報は脳へと正確に伝わるものです(運動中心のズレは発揮できる力の上限を左右しますが、それでも通常よりは遥かに強い力を発揮できるはずです)。

 

 三軸の関節操作は、実際に行うと「関節が締まって安定する感覚」を強く実感でき、それが誤った動きで弛んでしまうとすぐに気付くものです(圧力の変化を感じやすい)。よって、その「関節が締まる感覚」を維持し続けることができれば、その間は関節内部の圧力も安定していることになります(三軸の関節操作は僅かな弛みで崩れてしまうので、最初は最大の力で安定状態を維持し続けるしかない)。

 

 私たちの体は不要な遊びがあると、そこに自覚できない不要な動き(揺らぎ)や、力の漏れが生まれてしまうものです。これは、自分では正しい形で行っているつもりが、関節ごとに情報の狂いや不要な動きが加わることで、その形が実際には正しいものとなりません。また、全力で押しているつもりが、全身の関節の遊びから力が漏れてしまうため、実際にはそれほどの力で押せていない、などといったことに繋がります。三軸の関節操作を正しく行うと、体の動き精度を飛躍的に高めることができるほか、関節の安定から強い力を発揮できることに加えて、力の漏れを消失することで自身の体から発した「十の力」を、十のまま相手に伝えることができます。ちなみに、これは古流空手が「一撃必殺」のために実践していた仕組みと同じ方法です(もし打撃で十の力を十のまま伝えることができれば、その破壊力は通常の比ではない)。