体の縦の動き 3

 

 体はその運動機能のうち「屈曲・伸展」の縦の動きを行うことでより安定します。そして「歩く」など左右を均等に使う単純動作が、体の左右の偏りをなくすことにも繋がると説明しました。ただ、これなら「よく歩いてる人は健康」となるはずですが、実際はそういうわけでもありません。ここではその理由を「連動」の仕組みを使って説明していきます。

 

 連動は「体を効率よく自然に伸ばすための仕組み」として説明しましたが、実際には体の左右半身で個別に働く機能です。自律神経は体を左右半身で別々に管理していることが一般的なので、左右ごとに特定の機能的な偏りを持っているものです。これはそのまま「連動の程度の差」として現れ、左右半身での連動の違いとなって現れます。そして連動の働きが左右で異なるということは、そこに「捻れ」の要素を生み出してしまいます。本来は体を自然に伸ばすための仕組みとして機能するはずの連動が、左右半身で異なって作用した場合は体が捻れる直接の要因となるのです。

 

 体はその左右半身でそれぞれ働きが異なります。これは武術などの「半身の構え」が必ず右前であるように、また体育の「やすめの姿勢」が右足を前に出すように、「動」の部分を主に右半身が担当し、体を支えるという「静」の部分を主に左半身が支えるようになっています。これには右半身が「交感神経優位の感覚」で、左半身が「副交感神経優位の感覚」であることも関係しており、体の根深い機能に関わる仕組みとなっています。ケガなど、何らかの理由でこうした仕組みが強く働かなくなっている体も存在はしますが、ここでは一律に「右半身が動」「左半身が静」の性質を有するものとしていきます。

 

 連動の動きは本来「体を自然に支えるための仕組み」なので、それが強く作用しやすいのは左半身で、右半身はこれに劣ることがほとんどです(それゆえに動かしやすくもある)。例えば連動の一部である「左右股関節の伸展」が左右で違うとした場合、連動が強い左側では骨盤はより立ち(伸展が強まる)、弱い右側ではそれに劣るとします(屈曲気味となる)。それは連動の強い左側で「より体が開き」、弱い右側で「より体が閉じる」といった動きになるため、この左右に生じる動きの違いが骨盤部全体では「左回旋」という力となって現れます(ただし実際の骨盤の動きには複合的な力が働くため、単純に「左腸骨=外旋」「右腸骨=内旋」とはなりません/左回旋はあくまで骨盤内で潜在的に作用する力です)。

 

 こうした動きは体の主要部位(骨盤や胸郭や頭部)などに強く起こりやすいため、結果として体全体が左回旋の捻れというベクトルを内在することになります。ただ、実際の私たちの体が左に捻れていないのは、そこに「右回旋の補正」が入るためです。見た目には真っすぐに見える体でも、その内部には主要部位の左回旋と、それを補正するための右回旋が混在することで「捻れ」が表面化しないように調整されています。単純には骨盤・胸郭・頭部といった「重要部位」は左回旋となり、それらを繋ぐ腰椎・頸椎といった「接続部」は右回旋となります。