立位における連動 3

 

 大和の連動とは、体を自然に真っすぐ伸ばすための力であることはすでに説明してきました。体にとっての「理想的な立位」にはいろいろな考え方がありますが、これは「体のどの機能を対象とした理想であるか?」によって、人それぞれで考え方が違うのだと思います。「連動」で大和が対象にしているのは、まず「筋力を用いない立ち方(最も効率のよい立ち方)」ですが、これはあくまで基準であり、この基準からいろいろな立ち方を選択していけばいいのだと考えています。

 

 単純に、真っすぐな立ち方というのは機能的な面から二つを考えることができます。一つは「伸展相(吸気相)」で、もう一つは「屈曲相(呼気相)」です。これは単純に「一つの真っすぐな姿勢」があったとしても、その人が呼吸をしている限り、そこには屈曲と伸展の動きが生じることになります。そこで吸気の際の伸展側の姿勢が「伸展相」であり、呼気側の姿勢が「屈曲相」となります。もちろん両者の中間がいいのは当然なのですが、この双方の違いを明確化することで立位の仕組みを整理しやすくなるのです。

 

 まず伸展相についてですが、体というものは屈曲側には動きの自由度が大きいものの、伸展の側では自由が低いものです。伸展相の動きは大和の連動の動きと同じで、体の主要な関節を伸展させることで成立します(膝関節・股関節に始まり脊椎全体を均一に伸展させる)。立位自体、体の動き(可動範囲)を考えれば、すでに伸展しているようなものですから、そこからさらに伸展するというのであれば、それは伸展の限界に近くで強い緊張を伴った「苦しい姿勢」といえます。ただ、この「苦しい姿勢」にも重要な意味があるわけで、伸展方向の限界に近い動きであるということは、そこでは全身の関節の遊びが極めて小さくなります。関節の遊びがなくなるということは、関節がその構造に沿って「締まる」ことですが、関節は単純な動きによって締まる場合は、必ず正しい位置でしか締まれません(本来の関節位置に戻ることで締まることが可能になる)。そのため、伸展相の体では、主要な関節の全てが本来のあるべき位置に収まりやすくなるのです。つまり伸展相では誰でも体の構造に沿った、信頼性の高い「正しい立ち方」を得やすいということです(それが楽かどうかは別問題です)。

 

 これに対して屈曲相というのは、自由度が大きい屈曲方向に動くことになるので、その分だけ関節の遊びは増すことになります。関節の遊びが増すことによって体は不安定になりますが、その反面、関節周囲に強い緊張を必要としなくなるため、弛緩を伴った姿勢となります。緊張を伴う伸展相の立位では、骨(関節)の構造に従う形となるため、誰もが同じような姿勢となるのですが、弛緩を共なう屈曲相の立位では、そこに個人の自由度が許されることになります。

 

 伸展相と屈曲相は「一つの姿勢が持つ二つの形」として説明してきましたが、実際にはろんな健康法や治療法が「理想とする姿勢」を持つ中で、それがどちらの傾向にあるかを判別する目安となります。例えば基本的な姿勢を「屈曲相」の側に設定し、それを基準として、そこからさらに実際の呼吸に合わせた「伸展相(吸気相)」「屈曲相(呼気相)」の幅を設定するといった具合です。こうした観点でいえば、大和の連動による理想的な立位とは、連動が最大に機能している状態(伸展状態)を吸気時の姿勢=伸展相とし、そこから息を吐いた状態の姿勢を屈曲相(呼気相)とした上で、両者の中間を「理想の姿勢」とすることになります。

 ただし、これは「健康な人がとるべき姿勢」であり、大多数の人はこれに当てはまりません。「健康な人」というのは、この姿勢に多少の窮屈さは感じても、それを同時に「気持がいい」と感じるものです。それは体の主要な関節が比較的正常に動くことで、伸展方向に余裕があることから得られる感覚です。もっと単純な目安としては、この立位のままで「深い呼吸」が出来るか否かで分かります。体に機能的な余裕がない人では、この姿勢を緊張によって「気持がいい」と感じることはあっても、その場合は深い呼吸ができなくなります(緊張の増大によって呼吸機能が抑制されるため)。患者さんに対していうなら、これは体がよくなった時の理想の立位ということです。