立位における体の連動 2

 

 先の「保護姿位」のところで私たちの体は緊張によって「閉じる動き」が優先されると説明しました。しかしこの立位時における「伸びる」動きとは、それとは反対の「開く動き」となります。この開く動きは「閉じる動き」が「屈曲/内転/内旋」で構成されるのに対して、反対の「伸展/外転/外旋」で構成されます。つまり私たちの体は緊張によって閉じる動きの方向に歪みやすいのですが、同時に「立つ」ことによってそれとは反対の力を自身の内部に強く発生させることができるということです。これは「立つ」ということを楽に感じるか否かの問題で、実際の多くの人では立つことを楽(気持よい)とは感じてはいないと思います。これを楽と感じられる人では、立つことで自身の体の機能を整えることが日常的にできているといえます。大和整體ではこの機能と感覚を高めることを、基本の施術の主目的としています。

 

 先の膝関節や股関節では単純に伸展のみでその動きを説明しましたが、全身の主要な関節に「伸展/外転/外旋」の動きが起こるということは、内臓機能にも大きな影響を及ぼします。骨盤部に「閉じる動き」が起これば、内部の小腸・大腸はよりその機能を抑制されてしまいますが、ここに「開く動き」が起これば、その内部のスペースは拡張し、機能に余裕が生じやすくなります。これは胸郭でも同様で、胸椎から胸郭に「開く動き」が起これば、胸部の呼吸機能は向上し、より楽な呼吸が行えることになります(呼吸機能の充実は副交感神経の活性化に繋がる)。連動で重要なのは、その動きに「筋肉の強い緊張を伴わない」ことであり、これらは交感神経の過剰な亢進を伴うことなく、弛緩(副交感神経優位な状態)の中で達成できる姿勢です。

 

 ただし、実際の連動は膝関節や股関節に「完全伸展」を強いるものではなく、あくまで伸展方向のベクトルを生じさせるに留まります(最初は完全伸展とした方が実感しやすい)。体は完全伸展や完全屈曲といった関節に遊びのない状態になると、関節にかかる種々の力を逃がすことができなくなることから、固まりやすくなります(強い緊張=力みが生じやすい状態)。よってその手前の状態で伸展を留めることで、不要な緊張を伴うことなく姿勢が維持でき、そこからの動作も行いやすくなります。

 

 この連動で注意が必要なのは、連動による姿勢と一般的な意味での「よい姿勢(よく見える姿勢)」とは何の相関関係もないという点です。姿勢というのは本来、体の内部の状態が表に現れたものといえます。内臓の調子が悪ければ猫背の方が楽ですし、痛みで庇いたい部位があればそこを中心に丸まるのが自然です。そうした問題を抱えているにも関わらず「意識的に姿勢を正す」というのは不自然なことで、この時の姿勢変化に伴う緊張は関連する内臓の機能を大きく抑制します(姿勢を正す動き=緊張は内臓系にとって機能の抑制にしか働かない)。姿勢を正すことには「気持よさ」が伴うものですが。それはあくまで「一時の解放感」に過ぎず、無理に続ければ内臓の機能低下から起こるさらなる不調の要因にしかなりません。連動による正しい姿勢は全身同時に作用する力であり、体の局部で姿勢を正すことから起こる作られた姿勢とはその仕組みが根本的に異なるものです。

 

 姿勢というのはそれが普段から「真っすぐでキレイ」な状態である場合、それは内部の機能が相応に整っていることの自然な結果です。体の内部で「連動の働きを邪魔する力」が存在しないために(またはそうした力に連動が勝る状態にあるために)、体は無理なく重力と釣り合おうとするのです。この状態で起こる「釣り合う」という感覚は、体にほとんどその重さを感じず、全身が軽く動く状態となります。逆にそうでない人の体は常に「重力によって潰されている」ことの重さを実感しており(重力とうまく釣り合いをとることができない)、常に重力に抵抗するための緊張を必要とし、それゆえに疲れやすく、また壊れやすくもあるといえます。重力と釣り合いがとれている状態では、体が上下に引っ張られているような感覚となり、自然に真っすぐ伸びた状態を維持できます(天地の感覚)。こうした状態になると、そこから起こる動作も同じ感覚の中で行うことができるため、そこで交感神経の過剰な活動はあまり必要なくなります。そして、相対的に副交感神経が活性化することで、内臓機能も活発に機能できる状態で日常動作を行うことができるようになります。