歪みそれぞれの扱い

 

 体の歪みについて一次から四次までの種別を設けましたが、これはそれぞれの歪みに対して効果的な対処法があるというわけではありません。体の歪みというのはその大きさ(歪みの強さ)でその程度を判断しがちですが、実際には見た目に歪んでいないように見えても潜在的には「強い捻れ(ベクトル)」を持っている場合もあるので、歪みの程度というのはあまり参考にならないものです。また歪みというのは身体内部に起こっている「何らかの異常」の現れなので、結果として起きている歪みそのものを正しても、原因が消えない限りはまた歪んでしまうものなので、歪みそのものを正すことを重要とは考えません。

 

 先に取り上げた一次から四次の歪みについては、一次・二次の歪みであればそれは自然な範囲の歪みであり、歪みそのものは必ずしも施術によって整える必要がなく、その他に施術を必要とする機能障害を対象にすればいいということになります。問題は三次・四次で、三次というには自然な範囲を超えて体が不自然な機能を構築し始めてしまっているということで、こうした状態にある体は「誤作動を起こしている」と言えます(やむを得ず不自然な機能を構築せなばならない状況にある)。こうした体では歪みの原因となった機能障害を改善したとしても、歪み自体が消えずに残ってしまう可能性があります。三次以降の歪みはそれが習慣化してしまうと、歪むに至った原因自体が消失してしまっても残り続け、関連する部位に機能低下を招く愁訴や疾病の温床となりかねません(特に原因となった部位に強く干渉する)。この場合には、新たに構築された誤った歪みそのものを正さなければならない可能性が高くなります。

 

 これが四次的な歪みになると、脳の側から局部を強く緊張させることで「固定」の命令が出ているので、通常の運動機能への施術だけでは改善ができなくなります。この固定の対象となっている部位では、持続的な緊張によって血液の循環とともに神経活動の低下が著しくなっているので、まずはその感覚から回復させる必要があります。体の動きは、その部位の状態を感じる感覚神経の働きに応じて運動神経の命令が下されるので、固定となっている部位では正しい動きを行えるだけの条件が揃っていないのです。とはいえ、この「固定」状態にある部位の緊張というのは、大抵が筋肉レベルの緊張ではないので、ここで説明する基本の段階の手技では直接に改善することはできません。ただ、こうした機能異常の背景は、身体機能の複雑化に伴って身体情報の処理が脳の機能の上限を超えたことにあります。施術によって身体機能を整えていくということは、その複雑化した身体情報を単純化していくことに繋がるので、そうした過程では局部の「固定」状態も緩くなりやすいので、これが三次の歪みの段階にまで回復すれば、結果的には施術によって改善できることになります。