膝から先と肘から先

 

 大和整體では全身の中で「膝から先」「肘から先」を特別な部位とし、他の全身とは分けて考えます。これは先の「足部と下腿部」「手部と前腕部」の延長で、これらの部位を「外界との接点」と捉えるためです。

 

 私たちの日常生活は、足で地面に触れ、手で「何か」に触れることから始まっています。この「触れる」ということには必ず「対象に体を合わせる」ということがつきまといます。例えば足部なら地面の状態に合わせて接地をしなければなりませんし、手が何かを掴む時には、その対象に合わせた掴み方をする必要があります(生卵なら割れないように)。手足にはこうした対象に合わせた微調整が常に要求されています。そしてこの動きは基本的に「下腿を含む足部」と「前腕を含む手部」で完結することが理想です。これに対して残りの全身では「自身の体の動きに専念する」というのが理想で、そこで「対象に合わせる」という感覚は希薄になります。これは膝から先と肘から先を除いた全身(体部)が、動作における「力」を担当し、残った末端が「質(力の微調整)」を担当するということです。そのために膝・肘から先は骨が二本→五本と、それまでの大腿や上腕の構造(骨が一本)よりも遥かに複雑な構造となっていくのです。この仕組みは四足歩行の動物を例にすれば分かりやすく、膝・肘より先の柔軟性を生かして地面に安定して接地することができれば、接地による問題はそれより上の全身には影響しません。両者がそれぞれ自身の行うべき作業に専念できることで、結果として全身の動きの効率もよくなるのです。

 

 また、こうした機能的な分担には、内臓の保護という意味もあります。仮に四足動物が膝(肘)から下の機能だけで地面にうまく接地することができなければ、その不足分は体幹部の動きで行わなければならず(大腿や上腕の単純な機能ではそれを補うことができない)、その体幹部の不要な動き(緊張)はそのまま内臓機能に影響を及ぼします。つまり地面の凸凹の問題を膝より下部で吸収できれば、歩行時にその影響が内臓機能に及ぶことはないのですが、それができなければ内臓機能が日常的に低下してしまうということです。膝や肘を境として体の機能が切り替わることで、体はより本来の機能を発揮できるようになります。