肩甲骨と鎖骨

 

 下肢と体幹の境界が仙腸関節なら、上肢と体幹の境界線は胸鎖関節となります。ただし胸鎖関節は関節としては弱い構造なので、その補助に肩甲骨が働きます。肩関節の自由な動きは誰もがイメージする「肩関節(肩甲上腕関節)の柔軟性」に頼るべきものではなく、鎖骨と肩甲骨、またこれらの動きを受け止める「胸郭の柔軟性」の全てが統合することで得られるものです。このために必要なのが「肩関節を浮かせないこと」です。よく「緊張すると肩が上がる」などといいますが、肩関節はその位置が少しでも上にあがると、その時点で肩甲骨や鎖骨との連繋を失います。その結果として上肢の動きが肩甲上腕関節に頼るものとなってしまうと、簡単に壊れてしまいます。

 

 よく肩関節は「遊びの大きな関節」と考えられていますが、これは肩甲骨や鎖骨に充分な柔軟性がないことで、その動きの負担が肩関節に集中することから「不要な遊び」が大きくなっている状態です(肩甲骨や鎖骨に加えて上肢の諸関節までもが「締まる」ことで相対的に肩関節が弛む)。たいていの人で肩関節が弛いのはこのためで、周囲の関節の不要な締まりを改善すれば、肩関節は本来の「締まりのある安定した関節」として機能します。ただし、こうした肩関節の機能的な偏りの背景にあるのは「呼吸器の働き」の問題であり、呼吸そのものの改善なくしては肩関節の正常な動きを得ることはできません(特に肩甲骨は呼吸器の問題に敏感に反応してその動きを失う)。