足部と下腿部

 

 大和整體では足関節を境とした足部と下腿部を本来は「一体として使うべき部位」であると捉えています。これは両部位の機能を足関節を境に分断してしまうとその機能が著しく弱まるためで、両者を一体として使うことでその機能は飛躍的に高まります。これは「動物」をみるとよく分かるのですが、動物のほとんどは「踵」を地に着くことなく立ち、走っています(例外はクマなど)。足関節(足首)は三軸の全方向へと動くことができる便利な関節ですが、この関節には「全身の体重」という際立って大きな負荷がかかります。足関節を支える構造を見て、それらに全体重を支えて動くだけの強度があると思える人はいないと思います。

 

 下腿を含めた足部の機能は「つま先立ち」をするとよく分かります。つま先立ちをするとそれまでの足関節の柔軟性は失われ、足関節はそれまでの「柔軟な関節」から一転して「強固な関節」へと変わります。これは体(下半身)の動きが「指先を起点」として本来の力を発揮するためで、この時のつま先から下腿までは一体となって動きます。そして、本来足関節に集中する負荷は、足部から下腿全体の全域に分散されることになります(足部と下腿部が理想的に連繋している状態)。「下半身が強い」という人では、つま先立ちをしている時としていない時のどちらでも足部と下腿部の関係性(連繋の程度)に変化がないため、常に足関節にかかる負担を足部と下腿部の全体で分散させています。この時に重要な役割を果たすのが脛腓骨の動きで、脛骨・腓骨がそれぞれ独立した柔軟な動きを有していれば、足部と下腿部は密接に連繋し、理想的な機能を発揮します。この両者の連携は「つま先立ち」では理想的に機能しやすくなるものの、普通に足裏全体を接地してしまうととたんに連繋が弱くなるものです。足部と下腿部の連携の程度、その多くはこの頸腓骨の連携にかかっているといっても過言ではありません。

 

 この足部と下腿部の連携の程度は、立位での体のバランスの取り方に大きく関わります。足部と下腿部が連繋した状態では、膝関節より下の機能が体を支えるのに充分な力を発揮してくれるため、膝から下の機能だけで体のバランスがほとんどとれてしまいます(膝関節より上はほとんど動く必要がないため正常な機能を維持しやすい)。しかし連繋していない状態では膝より下が正しく機能しないため、代わりに股関節・肩関節が主体となって体のバランスをとることになります。この場合、当然重心の高い後者が不利となり、常に全身に相応の緊張を強いられることになります(肩こり・腰痛の根本的な要因)。

 

 余談ですが、私は登山の時に屋外作業用の地下足袋を使うのですが、地下足袋を使うと足部と下腿部の連繋が強化されるために登山の疲労は膝より下へと集中します(その代わりに膝より上は楽になる)。これがトレッキングシューズを履くと足部および下腿部の機能が固定によって使えなくなるため、その負担は大腿部を中心とした上位へ移ります(膝より上の全身でバランスをとらなければならない)。