立ち方と足部

 

 ここでは定型的な立ち方の足部の機能について説明しておきます。立位ではまず足の置き方が重要な意味を持ちますが、ここではそれを一般的な「外旋60度」としておきます(左右を各30度ずつ開いた状態)。この角度の目安は左右の足で「拇趾側・小趾側に均等に体重がかかる状態」となっています。仮に右足を外側に30度開いた状態を「基準位」とするとして、そこから内旋方向に角度を変えると体重のかかり方は「拇趾側<小趾側」となり、外旋方向では「拇趾側>小趾側」となります。どちらに偏るにせよ、内外で力のかかり方に違いが生じれば、体はその不均衡を補うための「捻れ」が生じやすくなるので、外旋60度を「基準位」として、そこから個人で左右の足の内外で均等に力がかかるように調整をします。足を開く範囲は「楽な位置」でいいのですが、その指標は呼吸が適するので、最も楽に呼吸ができる足幅を探して下さい(左右の踵をつけた「気を付けの姿勢」は緊張を保つための「軍隊姿勢」なので避けます)。

 

 足部と地面の接地は基本的に「拇趾球・小指球・踵部」の三点で行われます。この三点の加重の順は正しければ「拇趾球→小指級→踵部」となり、誤れば「踵部→小指球→拇趾球」となります。簡単には前者が「つま先加重」で、後者「踵加重」ということです。加重はつま先優先であれば、踵への加重をつま先によって調整することができるので足根骨の一定の動きを確保することができ、結果として「足部のクッション」が機能することになります。そしてつま先優位の加重はそのまま「伸展相の姿勢」へと繋がっていきます。対して踵優位の加重では、踵に加重を集中させ、つま先はバランスをとる作業のみ行わせることになるので足部のクッションが機能せず、足部で地面を掴むことができなくなります。その結果として体がその自由度を大きく奪われ、不要な筋肉の緊張が生じることになります。これは「屈曲層の姿勢」で起こるのですが、「正しい屈曲相の姿勢」ではなく、具合が悪い時の猫背などが相当します。

 

 拇趾球・小指球への加重は、ここを支点として指先に力が入る状態を作ることに繋がります。足部が「地面を掴まえる」となれば、本来は加重が拇趾・小指といった指先に集中しそうなものですが、指先の役割は「加重を受け止めること」ではなく「動きを作り出すこと」にあります。拇趾なら、指先から拇趾球の範囲で加重を受け止めつつ、その比重を拇趾球に割り振ることで拇趾に一定の動きの機能を確保することができます。これによって体の動きと足部の接地の状態に応じて必要な動きを行うことができるのです。この時、指部の各関節の動きは拇趾を除く四指で中足基節関節が伸展、近位指節間関節は屈曲、遠位指節間関節は伸展となります(実際の動きよりはそこに生じている力のベクトル)。これが踵優位の加重→屈曲優位の姿勢では、それぞれの関節に生じるベクトルが逆になるため、地面を掴むための動きを行うことができなくなります。