立つということ 2

 

 大和整體では立つという時に足部の機能を重要視します。この時の足部とは、足先から下腿までを含んだ範囲ですが、この部位が正しく機能するか否かで全身の状態が大きく変わります。この足部の役割は「地面を掴まえること」で、足部がその機能全てを使って地面を掴まえることができれば、下半身は地面に根を張ったように安定することになります(足は木の根に相当する)。しかしこの足部がその機能を発揮するためには「体の自然な重み」が必要となります。これは全身の力が抜けることでその重みが自然に下へと下がり、その重みを受け止めることで足部に大きな負荷がかかると同時に、その負荷によってその機能の隅々までが発揮されるということです。これは別の言い方をすれば、足部以外の部位に何らかの緊張による「余計な動き」が存在すれば、体の重みは真っすぐ足部へ集中せず、そこに捻れや歪みが生じることになるので、足部がその自然な機能を発揮できなくるのです。足部が正しく機能していれば、残る全身はただその足部(膝関節)に乗っているだけでいいのです。

 

 これを簡単に実感する方法は立位の状態から「膝を曲げること」です。真っすぐ伸ばした膝を徐々に曲げていくと、次第に足裏と地面の接地感が強くなるので、これが最大になる位置を見つけます。この時、下腿を含む足部には全身の重みが集中するため、地面を掴むだけの条件が揃います。地面を掴む感覚が得られたら、その感覚を維持しつつ可能な範囲で膝を伸ばし、同感覚を維持できる限界点を見つけます。この状態から上半身をいろいろと動かしてみると、膝を伸ばしている時よりずっと軽く動くことが分かります。何か愁訴を持っている人なら、この状態になるだけで愁訴も大きく軽減しているのが分かる筈です。これは足部が地面を掴まえていることで、全身の機能の中心が下半身に移動し、体を支える足部以外には緊張が不要となった結果です。最初は膝を大きく曲げなければこの状態をつくることが出来ないのですが、慣れてくるとあまり膝を曲げないでも同じ状態をつくることが可能になります(立位で膝を伸展させると膝関節の固定とともに全身が緊張しやすくなるので大和整體では軽度屈曲位が基本となります)。

 

 ここでは、立位において「体のバランスをとる」という作業の一切は膝から下の足部のみが担当し、残る大腿部から上半身の仕事は足部に支えられた膝関節にただ「自然に乗る」ことになります。「自然に乗る」ということは、全身の関節構造に沿って最も効率のよい関節位置を保持するということです(立位で関節が最も安定する位置)。つまり足部が地面を掴むというだけで、残る全身もその人の状態なりの「自然な立ち方」に落ち着くということで、誰でも実感のしやすい「正しい立ち方」の一つとなります。「正しい立ち方」というと、足をどう置くか、体のどこにどう体重を載せるか、中心軸はどこにイメージするかなど、「唯一の理想型」に定める考え方が普通ですが、実際には各自の体の状態に応じて適した立ち方も異なるので、まずはこれを「立つ」ということの出発点とします。