同じ施術は行わない

 

 一度行った施術は体にそれを覚えられてしまうので「二度と通用しない」という考え方があります。これはもちろん正しいのですが、ここでの「同じ施術は行わない」というのは、「自分の行った施術を疑わない」ことを理由としています。ある施術を行い、それが自身で「正しい施術であった」と思えるものだったとします。しかし次の来院時にはまた戻ってしまっていたとして、その施術は「誤り」だったのでしょうか? 大和整體ではそれが「自身が正しいと思える施術」であった場合は、「原因が他にあるため」と考えます。「その施術自体は間違ってはいないものの、その正された機能を維持できない何らかの理由が他(他部位)にある。」と判断するのです。体は一度受けた施術の効果・反応をすべて体や脳で記憶しているので、それ自体が簡単に消え去るということはありません。その効果が維持できない理由、それを排除しさえすれば、以前の施術の効果が正しく発現する筈なのです。

 

 もちろん効果が消え去ってしまった理由が、行った施術の誤りであることもあるでしょう。ただ、そうであれば同じ施術を繰り返すこと自体が無意味です。そして自身の施術の効果を疑うこと自体、自身の施術の質を落とすことに繋がります。慣れない施術者で「未だ自分の施術に自信が持てない」という場合なら、「仕切り直し」と考えてもよいでしょう。「ある方向から攻めてダメだったのだから他の方向から攻めよう」ということです。何にせよ、自身が一度行った施術の効果・反応は必ず体(脳)には蓄積されているわけで、「効なかった」とは考えないことです。前回の効果が消え去っているように感じたとしても、それは潜在的なものとなってしまい、表面には現れていないという状態なので、何がその邪魔をしているのか、どうすればそれを表面化させることができるのか、といった「次」へ進む考え方を持つべきです。

 

 自分が確信を以て行った施術が戻ってしまったとして、同じ部位への施術を禁じるとなれば、いろいろなこと・可能性を考えざるを得ません。それが愁訴の当該部位であった場合は、もう愁訴の当該部位は触ることができないわけですから、そうではない部位への施術から愁訴の当該部位へと影響するような施術を組み立てなければいけなくなるわけです。これは言い換えれば「愁訴の当該部位に囚われずに施術を行うことができる」ということで、こうした施術を習慣づけることで「愁訴」に囚われず体の全体を見て施術を行う感覚が身に付きます。こうした考え方を前提とすると、逆に「迂闊に愁訴の当該部位は触れない」となるわけで、施術の視野を広げることに大きく役立ちます。愁訴の当該部位への施術に慣れてしまっている人にとっては実践は難しいかもしれませんが、大和整體の施術ではこれが「前提条件」となっています。