レールに載せる


 

 体が交感神経の過剰な働きによって、本来の「正常な機能や感覚」から外れている人を元へと戻すには、計画的かつ段階的に、先の「ギア」を下げていく必要があります。その結果として、体を本来の「正常な機能や感覚」へと戻さなければいけません。人の体の構造は皆同じです。しかし実際にそうした「同じ体」であっても、施術の効果なり疾病の経過といった反応は、人それぞれで異なるものです。こうしたさまざまな反応に対して、先の交感神経の稼働な働き、その程度からそこに「正常な反応」「異常な反応」という区分を設けるとします(好調・不調に関わらず正常・異常の区分がある)。「正常な反応」をしている体というのは、本来の回復力・治癒力を有しており、施術に対しても「普通の反応(正常な反応)」を得ることのできる体です。これに対して「異常な反応」をしている体というのは、本来の回復力・治癒力を発現できず、かつ施術に対して「個体差の強い反応もしくは無軌道な反応」をする体です(身体機能に多くの誤作動を抱え迷走している状態を指します)。

 

 「正常な反応」をしている体というのは、仮に無理をして不調に陥ったとしても、休みさえすれば自然に回復ができます(時間がかかるとしても徐々に治癒へと向かう)。こうした状態を電車の「レール」と例えるのですが、電車がそうであるように、レールに乗ってしまえば体は無軌道な反応をすることなく、一定の反応の中で回復・治癒していくものです。しかし、愁訴や疾病を自己治癒できずに治療を受けるという人は、大抵は「異常な反応」の側に属し、その機能的な迷走ゆえになかなか自然に治癒することができません。「正常な反応」をしている人には私たちの施術は必ずしも必要ではありませんが、「異常な反応」をしている人については、施術でその反応を正常に戻す必要があります。これを「レールに載せる(正しい反応へと戻す)」としています。

 

ここでの正常な反応というのは、体の変化の各段階において「どういう愁訴が発症し、どういう経過を経て治る」といった臨床経験上の正しい反応を意味します。つまり体の働きが正常な範囲なら、起こり得る愁訴には一定のルールがあり、その治癒過程にも一定のルールがあります。それに沿って悪くなり、かつ治ってくれる人は「正常な反応」をしているということです。施術の理想はあくまで野生動物や幼い子供と同じ「自然な体」なのですが、それはあくまで理想であって、現実的にはこの「レールに乗せる」までを一応の「施術で到達すべき目標」と考えます。レールから外れている人がレールに乗ると、体の状態をある程度まで自分で感じ取れるようになるので、自然に体に無理のない生活行動をとるようになるものです。

 

 レールから外れた体をレールに載せるために必要なのは、交感神経の過剰な働きの抑制です。しかしたいていの交感神経の過剰な働きは、そこに「多くの機能障害」が伴うことで必然として成立しています。いわば体自身では機能を整えることができない状態(その不具合を交感神経の働きによって補っている)となっているので、これを施術により細部機能から整え、体自身がそれを維持できるよう手助けをする必要があります(「治すための施術」とは意味が異なる)。その結果として交感神経の過剰な働きを段階的に抑制し、それが一定の段階に達した時点で体が正常な反応をする「レールに載った状態」となるのです。レールにさえ載ってしまえば、あとは自然回復も望めますし、施術の効果も高まることになります。大和整體の施術は「治す」のではなく、体の反応を正常化することによって「治る」状態まで体を導くことを重要視します。